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RETAIL TREND:レジの未来「レジカウンター」を
疑うことから始める店舗改革

最近、非常に多くの小売店業者様から「古くなったPOSレジを入れ替えたい」といったご相談を受けています。Windows7のサポートが終了したり、今年から運用が開始される軽減税率への対応といったタイミングが主な要因となっていたりはするのですが、問い合わせをいただいた段階では、それは単に「設備の変更」であるという認識のお客様がほとんどです。

しかし、店舗において、顧客の様々な行動データが集まるシステムを刷新する、ということは、単なる設備変更以上の意味があると捉えるべきではないでしょうか?

これからの時代を生き残る店舗の在り方を考えるのであれば、レガシーなPOSレジを入れ替えるという話が社内で持ち上がったタイミングを逃さず、改革への足がかりとしたいところです。

「OMO」を意識しない店舗に未来はない

なぜ、「POSレジの入れ替えタイミング」が改革へのチャンスになるのでしょうか。それを説明するには、OMOという考え方を理解する必要があります。

小売業に関わる方であれば、OMOという言葉を一度は耳にしたことがあるかも知れません。これは「Online Merges with Offline」の略で、直訳すると「オンラインとオフラインの融合」のこと。これからの時代を生き抜く小売業にとって必要な考え方として提唱されています。

今や多くの小売業が実店舗とECサイトの両方を販売チャネルとして持っていますが、それぞれのチャネルを完全に分断した状態で販売計画やプロモーションを考えていては、オンラインとオフラインを自由に行き交う今時の消費者に対して有効な施策を打つことは困難となっています。

顧客データをフル活用し、あらゆるチャネルで徹底的に顧客の購買体験を高めることで深いエンゲージメントを築くことがOMOの考え方であり、つまり、もう店舗は店舗の売上だけを見ればいい、という時代ではないのです。

そして、このOMOを実践的なアウトプットに落とし込むには、店舗における顧客データが非常に重要であることは言うまでもありません。店舗におけるデータもそれ単体で取得するだけでは意味がなく、ECサイト上の顧客データと統合して一元管理する必要があるのですが、POSレジを入れ替えるタイミングこそ、その機能をどうPOSに持たせるかという「改革視点」を入れて検討するチャンスと言えるのです。

今、店舗で取るべきデータが取れていない

現行のレガシーなPOSレジでは顧客に属したデータが取得できません。仮にPOSシステムを「必要な顧客データを取得する装置」として捉えず、単なる設備として現行と同様のPOSレジで入れ替えた場合、その先にあるのは「モノの情報と人の情報が紐づいていない状態」です。

それでは顧客一個人に対して適切なレコメンド施策も打てません。パーソナライゼーションの重要性が高まっているこの時代に、せいぜい総花的なDMを配布するぐらいしか打ち手がなくなってしまうのです。

このような状況が、店舗改革を止めてしまっている一因と言えるのではないでしょうか。

接客の仕方からシステムを考える

ECサイトで買い物をする顧客の思考が比較的「冷静・論理的」であるのに対し、どんな業種であれ、リアル店舗の強みは「顧客の感情」に訴えられるという点にあると思います。

それは、商品の手触りだったり、店舗空間の作り込みだったり、様々な要因がありますが、接客もその重要な一部を担います。最後は人による接客が顧客の感情に訴えてクロージングに結びつくというケースは多々あるわけで、店舗における顧客データはその接客のクオリティを格段に上げてくれるのです。

アパレル店においては購入履歴から見るその顧客の趣味嗜好、眼鏡店においては検眼データ、玩具店であれば子供のデータ、ペットショップであれば顧客本人よりも飼っている犬種など。もちろん、そのデータを最大限活かせるかどうかは、販売スタッフのスキルに拠るところも大きいのですが、それがあるのとないのでは売上インパクトに大きな差が生まれていくでしょう。

そして今のテクノロジーは、そのきめ細やかな情報の取得を可能にしてくれます。POSシステムは、そのような接客向上にダイレクトに繋がるものとして捉えられるべきなのです。

店舗における「オフラインデータ」をどのように取得するのか

一方で、ECサイトのデータと店舗のデータを一元管理できる基盤があっても、現状集められるのはECサイト上のデータがほとんどで、店舗におけるオフラインの顧客データをどう取るのか?という課題があります。

また、例えば店舗に来る顧客100人のうち既に会員登録されている既存顧客が20人いた場合、残り80人のデータをどう取得するのか、重複している20人のデータをどう差し引いて集計するのか、という課題もあります。

これらは、必要とわかっていても長年POSレジが解決できずにいた課題とも言えます。一部の企業では、ビーコンや画像解析システムなどを投入し、それらを解決するべく実証実験を始めています。

現状ではそれらのシステムを構築するコストがかかりすぎるのと、個人情報の扱いの難しさなどもあり、今すぐにそれらを活用することはできませんが、ここが発達することによって、いずれブレークスルーを迎える時が必ず来るでしょう。

その時点でデータを一元管理する基盤ができていないと、確実に競合に対して遅れを取ることになってしまいます。

店舗が改革できないのは「レジカウンター」があるから

ここまで見てきた通り、これからの時代を生き抜くためにすべての店舗に求められるのは、オンライン/オフラインの顧客データを統合し、接客をはじめ、買い物体験を向上させる様々な施策に有効活用することです。

POSのシステムは、そのミッションにおいて重要な役割を担っているにも関わらず、なぜ単なる「設備の入れ替え」として捉えられてしまうのでしょうか?

ここに、一つの仮説があります。それは、いまだに「レジカウンターがあること」が当たり前になっている店舗空間に誰も疑問を差し挟まないからです。

接客のスタイル自体、時代に合わせて変わっていくべきものと考えれば、POSシステムはもっと自由でいいはずです。キャッシュレス決済化が進めばスタッフがタブレットを持つだけでも成立するかも知れないし、業種によってはレジレスという形がもっとも購買体験を高める可能性もあります。「ショールーミング」に特化した店舗にするという形だって考えられます。

それにも関わらず、いまだにほとんどの店舗にはレジカウンターがあり、レジカウンターがあるからこそ、そこにはPOSレジ専用のハードウェアを置くことが当たり前になっています。すると、途端にそれは単に「設備」であり、古くなったら変えるもの、という発想にしかなりません。

これは、長年培ってきたリアル店舗の空間づくりが職人技クラスに成熟したが故の弊害とも言えます。店舗づくりのスタート時点で、レジカウンターは当たり前のようにある前提となっているのです。

「POSシステムは設備」という概念を捨てる

繰り返しになりますが、POSレジの入れ替えを「設備の刷新」と捉えてしまうと、それは単なるハードウェアのアップデートにしかなりません。

1億円かけて古いPOSレジを新しいものに入れ替えただけでは、プラスマイナスゼロなのです。いや、これからの時代を見据えた時に、店舗における顧客データを取得できないままにする入れ替えを実行するのは、むしろマイナスと言っても過言ではないかも知れません。

1億円を投じて遅れを取るぐらいなら、OMOの視点を持って1.2億円かけて基盤を整え、未来に投資すべきではないでしょうか。

もちろん、データベースの統合やマルチデバイス対応と言った話になると、単にバックオフィスの固定費で扱う話ではなく、部門・部署を跨いだ経営判断を伴う事案になるでしょう。その分難易度は高くなりますが、今、そこにメスを入れずにやり過ごすことは、決して賢明ではないのです。