目的と商材から考える、
どうしたら越境ECは上手くいくのか?
メイドイン・ジャパンの良さが色濃く出る商材
「日本製」の良さがプラスに働く商材であれば、越境先に競合自体は存在しないため、上手くいく可能性があります。例えば、着物や和傘、焼き物など、伝統工芸品のような商品などはわかりやすく「メイドイン・ジャパン」をアピールできます。
また、伝統工芸品出なくても、日本製であることがプラスに働いて成功を収めている越境ECも存在します。
例えば、株式会社マーケットエンタープライズが運営する、リユース品をECで販売する「ReRe」などは、カメラやフィギュアといった商品における「ユーズドインジャパン」の需要が世界中にあることを証明しています。特にアメリカでの人気が高く、高額な商品でも「一点物」というリユース品ならではの特徴がプラスに働き、成功を収めている越境ECと言えるのではないでしょうか。
また、アフリカをメインの市場として中古車の越境ECを運営するビィフォアードは、扱う商材自体の独自性が高いこともありますが、サイトの見やすさから顧客対応、配送の速さまで、日本にとっては当たり前のことを丁寧に実行する「日本のおもてなし」の良さを徹底したことで、現地顧客の満足度を高め、成功を収めています。
「売上」が目的であれば現地モール型ECへの出店
越境で自社ECを立ち上げることは、ここまで見てきた課題から考えてもわかる通り、決してハードルは低くありません。もし、越境ECをやる目的が、純粋に「ブルーオーシャンな市場を開拓して売上を伸ばすこと」なのであれば、現地のモール型ECとパートナーシップを組んで出店するのがベストな選択と言えます。
もちろん手数料などのランニングコストはかかりますが、現地での商習慣を理解し適応するという点や、ローカルの消費者に確実に刺さる集客施策を打つと言った場面では、ナレッジのない自社で手探りにやるより、はるかに効率的に物事を運ぶことができるでしょう。
MNC NY株式会社が手がけるコスメブランドの「シンプリス」は、中国にブランドを展開する際、現地創業メンバーと手を組んで、日本の商品販売に特化した越境ECサイトを新たに立ち上げましたが、そのような手法も、成功するための一つの形として考えられるのではないでしょうか。
「海外進出」が目的であれば現地法人の設立を目指すべき
単なる売上拡大だけではなく、本格的に海外にも拠点を築いていく第一歩として越境ECを位置づけるのであれば、まず現地法人を設立し、現地法人がECの運営を行う、もしくは現地のプラットフォームと組むというのが正解でしょう。
一見、日本に拠点を置いたままECサイトを運営する方が、現地法人を設立するよりもコストやリソースも抑えられそうな気がしてしまうのですが、ここまで見てきたように、細かい部分を紐解いていくと、それは大きな誤解だということがわかるはずです。
海外で盤石な基盤を整えるのは一朝一夕には行きませんから、確かに準備期間だけで見れば「まずECから」という話になるのは仕方がないことかもしれません。しかし、本気で海外進出を狙うのであれば、「急いては事を仕損ずる」にならないようにすべきでしょう。
例えばベビー服・用品ブランドの「ミキハウス」は、越境ECを立ち上げる以前からフランスやイタリア、アメリカなどに法人を設立し、グローバルなブランドの基盤を築いてきました。もちろん現地法人の設立当時はECサイトが存在しない時代でしたが、そこで形成されたブランド力があったからこそ、中国での越境EC立ち上げの際には、現地で出店が待たれていた、つまり機が熟した状態を作れたのではないでしょうか。