セミナーレポート次世代のEC構築のために
EC-ORANGE Ver5で実現可能な構築アプローチとポイント

アジアクエストとエスキュービズムは2022年4月14日、「次世代のEC構築のために~EC-ORANGE Ver5で実現可能な構築アプローチとポイント」と題したオンラインセミナーを開催しました。
2022年、エスキュービズムの提供するEC-ORANGEは、ヘッドレスコマースや次世代のECサイトに望まれる多くのシステム開発に適した形へと進化を遂げました。
本セミナーでは、EC-ORANGEの新バージョンでの開発実績を踏まえつつ、アジャイル開発など、これからのECを構築するための方法と仕組みについて解説しました。

次世代ECに最適なパッケージ「EC-ORANGE」

——変化する時代に最適なECパッケージとは。株式会社エスキュービズムソリューションデザイン部 部長の岩井源太がこれからのECサイトに望まれる機能や今後のECサイトのより適した構築の方法について解説しました。

デジタルチャネルの変化

コロナ以前と比較すると、ECに接触する人が大きく増加し、店舗を訪問する人は大きく減少しました。店舗は「販売の場」から「体験の場」になりつつあり、今までとは異なるシチュエーションと役割を持ち始めています。

ECの利用が日常的になったことで、ECに接触する総数が増えたため、EC利用率・EC化率共に大きく伸びています。
コロナ前の2019年(黒実線)と比較したグラフでは、2020年(黒点線)を経て2021年(緑実線)も引き続き伸び続け、定着している様子が見られます。

こうした変化の時代には、どのようなECパッケージが適しているのでしょうか。

EC-ORANGEはエスキュービズムの創業時2007年に発表してから、多くの進化を遂げてきました。当初はEC-CUBEをベースにしていましたが、独自プラットフォームのシステムとして生まれ変わりました。2019年という比較的近年にパッケージ自体を再設計、再構築しているためECシステムの設計概念が他社と比較して新しいという特色があります。

そして2022年1月にEC-ORANGEのVer5をリリース、今後のECシステムの「あるべき姿」を実現しやすくしました。市場環境の変化、ECがメインになっていく可能性を持つ時代に、EC-ORANGEは最適なパッケージであると我々は考えています。

視聴行動の変化

前述のようにECの利用が日常化した点と合わせ、Web/デジタルチャネルへの接触モチベーションが変化している点も重要なポイントです。
2000年代ではユーザー誘導の基本といえば「検索」で、GoogleやYahooなどの検索エンジン、ポータルサイトの検索の起点を押さえることが、最重要課題でした。
現在では検索する場所や言葉が変化し、そもそも「検索しない」層も増えてきています。SNSやアプリで検索したり、ハッシュタグを追いかけて受動的な情報収集をしたり、絶えず流れてくるパーソナライズされた情報を取得したりと、検索行為自体が変化してきているのです。

従来通りのマーケティング施策や検索エンジン対策では十分な集客が望めない時代に適したEコマースの形は「ヘッドレスコマース」であると我々は考えています。
どこから接触してくるか分からない状態のため、タッチポイント自体を多数用意し、その流入先をECに変えておくことで、たどり着いたコンテンツで直接購入してもらうことができます。

ユーザーのタッチポイントすべてを「購入する場」に変えるヘッドレスコマースは、多少力技といえますが得られるメリットは大きいものです。

EC-ORANGEのVer5では従来密結合していたフロントエンドとバックエンドを分離、フロントエンドの多層化・複数化にネイティブに対応しており、ヘッドレスコマースが実現可能になりました。

EC-ORANGE Ver5はこれからのECサイトに求められる様々な要素を、EC/オムニチャネル提供の見地から新たに実装し直した新時代のシステムです。

EC-ORANGE Ver5の大きな特色は以下の3点です。

1. REST APIの構造
多彩なフロントエンドをAPIを介して連携することでヘッドレスコマースが実現可能です。
2. ソースオープン提供
ソースコードをお客様に引き渡すため、システム開発の多様性を確保し、運用の自由度を高めることができます。内製化支援も実施しています。
3. サーバーレス環境対応
AWSを中心としたサーバレス環境の構築により、サーバ運用の負荷を低減、構築から運用までをシームレスにサポートします。

ユーザーの流入の仕方や購入方法の変化に合わせ、ECパッケージも選択する必要があります。
これからの時代に最適なパッケージとして進化したEC-ORANGEをぜひご検討いただければと思います。

アジャイル開発での次世代EC構築アプローチ

——アジアクエスト株式会社は、IoT・AIから、システム開発、アプリ開発、クラウドインテグレーションといった幅広い領域をカバーできるITサービスを提供し、お客様のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。同社デジタルトランスフォーメーション事業部 デジタルエンジニアリング部 部長 田村修平氏が、「アジャイル開発でプロジェクトを進める上でシステムの導入や戦略策定に必要なこと」について解説しました。

アジャイル(スクラム)開発の概念

まず、アジャイル開発とはどのような開発手法なのか解説します。
アジャイル開発は、設計→実装→テストを小さい単位で繰り返しながら完成へと進んでいく開発手法です。
繰り返しの1単位をスプリントと呼んでおり、各スプリントの間では確認や振り返り、軌道修正を行うことができます。

これに対して従来浸透しているものはウォーターフォール型といい、設計→実装→テストの各工程ごとにすべて完了させてから次の工程へ移る手法です。基本的には前の工程に戻る想定がないため、決めたらその通りに開発されていってしまいます。
テスト工程まで進んでから設計変更などが発生すると、大きな手戻りとなり、コスト増や工期遅延につながるおそれがあります。

アジャイル開発のメリットは、各スプリント単位でレビューや振り返りを実施し本当に使えるのか確認しながら開発を進めることができるため、運用上の問題や考慮もれを早期に発見し、影響範囲が小さいうちに方向性を修正できる点です。

  • 小さく始めて走りながら調整を行うため実運用時のリスクを回避
  • 繰り返しシステムに改修を行うためテストやリリースの自動化がスタンダード
  • EC-ORANGEでの開発は動く状態からスタートするためアジャイル開発と相性が良い

アジャイル開発では、クライアント企業側にステークホルダーをまとめるプロダクトオーナーの役割を担うメンバーを置き、ベンダー側ではスクラムマスターがシステム開発の推進とプロダクトオーナーの支援を行う、という体制を敷きます。

初期開発時の流れ

開発を始める前に、リリースプランニングで開発のためのドキュメントをお客様と一緒に作成していきます。

インセプションデッキ

プロジェクトの全体像をメンバー全体に端的に伝える

ユーザーストーリーマッピング

利用シーンを抽出し必要な機能を可視化する

プロダクトバックログ

開発チームが行う作業に優先順位をつける

非機能要件定義書

機能以外の見えない要件を定義する

次に開発フェーズではリリースプランニングで作成したプロダクトバックログをタスクに分解し、開発に入ります。
スプリントレビューでお客様(ステークホルダー含む)に開発した内容を確認いただき、開発内容の改善点を挙げて次のスプリントではさらに開発効率を上げていきます。この一連の流れを繰り返し、完成を目指します。
1スプリントは1~4週間の期間で行い、期間は固定して繰り返されます。

リリーススプリントでは、総合テスト、マニュアルなどのドキュメント整備、リリース作業を行います。
リリース後は次フェーズの開発のためにスクラムを継続、あるいは保守フェーズに切り替え都度対応を行うことも可能です。

クラウド開発のメリット

アジアクエストではアジャイル開発を行う際にクラウドを利用して開発を行います。クラウドとは、サーバーを物理的に所有せず必要な時に必要なだけ利用できるインフラです。
代表的なクラウドサービスはAWS、Azure、GCPなどがあります。

クラウドを利用するメリットは以下の点です。

  • コロナ禍による消費のネットシフト等、消費活動の急速な変化に対して迅速に対応が可能
  • 物理での所有では大きくコストのかかる障害対策を省コストかつ容易に実現可能
  • ビジネスの規模に合わせてシステムの基盤もスケール可能

サイトへのアクセスが大量になると、サーバーに負荷がかかりサーバーダウンの原因となります。サイトがダウンした場合、販売機会の損失が発生し、ビジネスへの影響が出てしまいます。
クラウドであれば、一時的にアクセスが増えた場合でも自動的にサーバーの台数を増やし、負荷収束時にはまた元に戻すこともできます。
もしキャンペーンやセールなどで予め負荷がかかることがわかっていれば、その時間帯を指定して台数を増やすなどの運用も可能です。

停電などの物理的な障害が発生した場合は、同じ場所に設置されている物理サーバーがすべてダウンしてしまうことも想定され、こうした障害事例では復旧までの時間がかかる場合があります。
AWSではマルチAZという仕組みがあり、物理的に離れた場所にサーバーを配置し、A地点でのサーバーダウンが起こった場合でも、B地点のサーバーを正常起動し安定稼働を継続することができます。

アジアクエストでは、アジャイル開発と親和性の高いEC-ORANGEでの次世代EC構築を支援しています。ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

まとめ

1、Web/デジタルチャネルへの接触モチベーションが変化している
タッチポイントの多様化、検索する場所や言葉の変化、そもそも検索しない層も増加
→タッチポイント自体を多数用意、その流入先をECに変えておくヘッドレスコマース化で対応
2、2022年1月リリースのEC-ORANGE Ver5では今後のECシステムの「あるべき姿」を実現しやすいパッケージに進化
フロントエンドの多層化・複数化にネイティブに対応。ヘッドレスコマースの実現が可能に
→EC/オムニチャネル提供の見地から新たに実装し直した新時代のシステム
3、アジャイル開発は設計→実装→テストをスプリント単位で繰り返しながら完成へと進んでいく開発手法
小さく始めて走りながら調整を行うため実運用時のリスクを回避できる
→次世代EC構築はアジャイル開発と親和性の高いEC-ORANGEが適している

登壇社紹介

アジアクエスト株式会社 【HP】https://www.asia-quest.jp/
アジアクエストは、企業のDXを支援する「デジタルインテグレーター」です。通常のシステムインテグレーションだけではなく、お客様のDXを共に考えるコンサルティングから、DXに必要なデジタルテクノロジーを駆使したシステムの設計、開発、運用までを一貫して請け負います。
IoT、AI、Cloud、Mobile、Web、UI/UXの各デジタル分野の専門テクノロジーチームを有し、お客様のゴールに向けて最適なプロジェクトチームを編成します。DXに関する豊富な知見と幅広い技術力により、ビジネスモデルの有効性や技術的な課題を検証する為のPoCの実施やデジタルに対応した大規模なシステムの構築まで、スピーディーな対応が可能です。
株式会社エスキュービズム
「Retail Innovation」をコーポレートスローガンに掲げ、流通小売業をはじめとする企業のICT/DX推進、オムニチャネルやOMOなど次世代型ビジネスモデルの課題解決を実現するシステムベンダーです。 リアル店舗とECシステム、コールセンターなど、複数チャネルの在庫・オーダーマネジメントが実現可能な自社開発システムパッケージを有しているため、完全ワンストップで企業のDX推進、デジタル化、オムニチャネル/OMO対応のシステム導入を支援いたします。