2022年2月17日、AI需要予測システムを提供するコニカミノルタジャパン株式会社と、ワンストップでDX推進、オムニチャネル/OMO対応のシステム導入を支援する株式会社エスキュービズムの2社が、「店舗の働き方改革の実現」というテーマでオンラインセミナーを開催しました。本セミナーでは、タブレットPOSとAIのシステムを活用した、店舗の働き方改革について解説しました。
タブレットPOSで見る店舗改革
実現のための3つのヒント
——コーポレートスローガンに「リテールイノベーション」を掲げ、企業のDXを支援する株式会社エスキュービズム。ソリューションデザイン部 部長の岩井源太のセッションでは、「タブレットPOSで見る店舗改革」について紹介しました。
これからの店舗業務量の変化
消費者の購買行動がオンラインへ移行しつつある中、ECサイトなどデジタルチャネルでの購買が増加し、店舗での購買は減少しています。
産業別就業者数の調査を見てみると、小売の現場では長期的かつ緩やかに労働人口が減少しています。それに加え、コロナ禍において緊急事態宣言等による店舗稼働率の低下、来店客数の低下が大きな課題となっています。
こうした状況を踏まえ、考えられる店舗の未来はどのようなものでしょうか。
実店舗は削減され、EC比率が増大する
店舗を削減してもECという異なる販売チャネルがあるため、店舗人員は削減傾向となる
実店舗の規模は人的・規模的に縮小される
店舗規模や人員削減が行われる反面、ECに関連する新規業務が発生する
店舗で利用できるリソースの総量自体は減っていきますが、店舗で担わなければならない業務量は増加するという結果になり、一人当たりの業務量が増加すると想定されるのです。
求められる「変わるべき点」
店舗業務の課題をまとめると、以下の二点になります。
業務システムの分散化による弊害
今までの店舗オペレーションを考えた際、特に決済時などは複数の端末を使って会員情報の照会やポイント情報の連携、決済端末の切替、など複雑な操作を一度に行うことはよくあるでしょう。
また、店舗に在庫がなく他店在庫からの取り寄せを行う場合でも、在庫検索に始まり他店への電話やメールでの連絡、バックオフィスシステムへの登録、前受け処理としての金銭授受、脚注情報の登録など、こちらも何らかのアクションを起こすたびに使うシステムやデバイスが変わることは珍しくありません。
一つの業務を実施するためのオペレーションが煩雑で、全てをトレーニングして覚える必要があり、実施の際の手間がかかるという点が課題となっているのです。
雇用した人材の育成に時間がかかるため、戦力化までに時間を要し、接客などの本質的なもの以外の教育コストがかかってしまうのです。
新規業務に対する新たな負担の発生
前述のとおり店舗スタッフを利用したEC流入策の強化、店舗スタッフの有閑リソースを使ったECビジネス、といった新規の業務が発生することも想定されています。
こうした新規業務によって自社ECの魅力を増幅させることを期待されているため、店舗業務の新しいアプローチが今後増えていくと考えられます。
求められる「変わるべき点」
前段で挙げた課題をどのように解決していくか、3つのポイントで考えていきます。
1:業務遂行のための仕組みを一つにまとめ、業務効率を向上させる
- マルチ決済の仕組みやBOシステムなど分散化しているものを統合する
- 顧客情報やポイント情報などを連携しPOSに集約する
- 他店の在庫情報の検索、閲覧、在庫引き当てを行えるなど、部分的なBOの機能をPOSに持たせる
- 決済端末やドロアなど周辺機器を統合し業務オペレーションを簡易化する
2:業務を遂行しやすい環境を整える
- 教育コストを削減するために使いやすく統一されたユニバーサルなインターフェースが必要
- 業務効率を向上させるためのインターフェース設計
3:新しい業務の対応を行う必要がある
- 他拠点在庫の販売を自店のタブレットPOSから行えるなど、多彩な販売方法を可能に
- EC受注の電話注文受付やチャット対応をタブレットPOSで行える
こうした機能の集約化が、エスキュービズムのORANGE POSであれば可能となっています。ネイティブアプリ型の店舗運用プラットフォームとして活用いただけるようなパッケージであることが特徴です。
- レガシーPOSシステムと比較し、価格優位性がある
- SaaS型のPOSシステムと比較し、カスタマイズが可能である
- 新しい店舗業務に対応が可能である
- 障害発生時にオフラインモードで運用継続可能
- 大規模店舗でも運用可能
ORANGE POSは店舗運用のリソース、コスト削減に貢献でき、かつカスタマイズが可能なタブレットPOSシステムとなっています。ぜひ一度ご相談ください。
AIデータ予測を活用した店舗運営改善
~社内データを活用してリテールDXを推進~
——AI需要予測システムを提供するコニカミノルタジャパン株式会社 マーケティングサービス事業部 荒井 勇輝氏のセッションでは、「AI、需要予測がどのように店舗改善に活かせるか」について解説されました。
小売業界が取り組むべき現状
EC化率が大幅に増大する中で、店舗は今「来店理由」を創出するための「顧客体験」の再設計が求められています。
店舗在庫を持たないショールーム特化型店舗、小売に体験価値を付加した異業種ハイブリット型店舗、カウンセリングやハイテク機材などを設置した体験特化型店舗など、先進的な変革事例も生まれてきています。
こうした先進的な取り組みだけでなく、従前の品ぞろえ強化やデジタルでのエンゲージメント強化など、クリエイティブな領域での業務比重が増大している点が実状ではないかと思います。
人員削減にも関わらず、業務比重が増加している小売業界で今求められているのは、「既存メンバーの工数確保」と「業務の標準化」であると考えます。
既存メンバー(ベテラン社員)の比重が高い業務とは、報告業務、発注業務、販促業務といった勘と経験に基づく「先読みが必要な業務」です。
先読み業務の標準化・効率化がリテール業界におけるDXの鍵となってくるでしょう。我々としては、ここにAI技術を活用した需要予測を適用することが一つの答えとなると考えています。
AIデータ予測プラットフォーム「AIsee」の活用
しかし、AIによるデータ予測に対するイメージは今のところネガティブなものが多い段階です。
- 事前のデータ準備が大変なのではないか
- ITやAI活用の専任者がいないためツール選定や運用が不安
- コストが高いのではないか
といった理由で、AIのデータ予測は大企業以外での普及が進んでいない状況となっています。
そこでコニカミノルタジャパンでは、中小企業でも導入しやすいクラウド型のAIデータ予測プラットフォーム「AIsee(アイシー)」を2021年8月にリリースいたしました。
AIseeの導入により誰でも簡単に先読みができ、空いた工数で取り組みたかった業務に着手していただくというのが大きな狙いです。
AIseeはデータの事前整形・加工の手間がなく、POSデータや売上実績データなどを投入していただき、予め用意されている予測モデルを選択するだけですぐに予測結果を見ていただける手軽さが特長です。
需要予測対象の過去データと関係変数に実績値をあてはめてAIseeが学習し、予測を出していくという流れになっています。
AI予測を活用した2つの業務改善ポイント
AI予測の活用でどのように業務改善をおこなっていくか、2つのポイントで考えていきます。
1:発注業務の改善
- AIseeによる販売や在庫の見通しを見てから発注量を調整することで精度を向上させ、廃棄ロスや機会損失の回避が見込める
- 予測ニーズの大きい非定番商品(断続的なデータを持つ商品)の予測にも対応
- 単品予測、カテゴリ予測の切替で販売実績のない新商品でも予測可能
2:販促業務の改善
- AIseeによる来場者数の見通しをベースに販促設計を行うことで、根拠に基づいた販促施策が実施でき、PDCAが回しやすくなる
- 6ヶ月先までの長期予測が可能。過去の長期データの投入により予測精度の向上が見込める
- 販促効果のシミュレーションが行えるため、販売目標に対するGAP対策の検討がしやすくなる
ぜひAI技術の活用によってベテラン社員の負担を低減し、店舗運営の抜本的な改革に着手いただければと思います。
また、AI需要予測の導入をきっかけとして、ビジネスプロセスの見直しやデータプロフェッショナル人材の育成といった企業全体のDX推進へとチャレンジしている企業様の例もあります。
蓄積されたデータを企業の資産として活用し、新たなビジネス価値の創出につなげていただければと思います。