セミナーレポートDX時代のEC拡大戦略
~大規模ECに必要な集客・決済・セキュリティ~

2021年12月16日、リアルとオンラインで様々な決済サービスを提供するSBペイメントサービス株式会社と、タブレットPOSレジシステムやEC/DX/OMO/オムニチャネルのプラットフォーム提供を行う株式会社エスキュービズムの2社が、「DX時代のEC拡大戦略~大規模ECに必要な集客・決済・セキュリティ~」というタイトルでオンラインセミナーを開催しました。

コロナによって消費者のデジタル化が進み、EC市場も急伸しました。リアル店舗を持つ会社でも、顧客の急速なECシフトを経験されたのではないでしょうか。それに合わせて自社のECを強化、ECの運用強化を進めると「こんなはずではなかった」「ここまでとは思わなかった」となりがちなのが集客とセキュリティ、そして店舗とは基準が異なるために課題となる決済です。
本セミナーでは、これからのEC拡大、顧客のECシフトに伴い発生する課題に対し企業はどう対応するべきか、大規模ECに必要な集客・決済・セキュリティについて解説しました。

コロナ後のオムニチャネル戦略

——コーポレートスローガンに「リテールイノベーション」を掲げ、企業のDXを支援する株式会社エスキュービズム。ソリューションデザイン部 部長の岩井源太のセッションでは、これからECサイトに本格的に取り組む企業様に向けECを発展させていくにはどのようなことをすればよいかを解説しました。

運用して明らかになるECの課題

コロナ禍において実店舗での購買行動が制限されたことにより、EC化率やEC定着率が増加してきています。本来であれば5年~10年間で徐々に成長していくところ、この1~2年で爆発的な成長率となっているのです。

そんな中、ECサイトの本格的な運用を求められ、事業として実際に稼働してみると自社内ではノウハウがないために課題が発生しやすく、なかなか成果が出ないというケースが続出しています。
ECサイトの流れとして3つのポイントがあり、それぞれに課題が生まれがちです。

集客
消費者を売場に集める
更新
内容を適切に更新する
売上
買いたい時に買ってもらう

更新についてはエスキュービズムでもECサイトの運用サポートサービス(https://ec-orange.jp/support/)をご提供可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

今回は特に集客にフォーカスして考えていきたいと思います。

変容する消費者行動

冒頭で述べた通りEC市場全体は拡大しているにもかかわらず、自社ECでは集客、売上共に伸びが見られないという状況が多く見られます。お客様が自社ECには来てくれていない原因が存在し、また購買プロセスにおいて離脱やバリア(障壁)が生じている可能性が考えられます。

購買プロセスの切っ掛けとなるのはまずは「認知系プロセス(Attention、Awareなど)」です。「自社ECをどのように消費者に認知してもらうのか」が本日の主題です。
商品の認知から購買プロセスがスタートするのはリアルもデジタルも変わりません。しかし、その場所とプロセスが大きく変化しています。

現時点ではECモールや家電量販店EC、アパレルECといった大手サイトに増加したEC利用者は一極集中している段階であり、初めに利用したECサイトから一歩を踏み出せていない状態にあります。
情報の精査がうまくできない、大手以外のECに恐怖感がある、ブランドの自社ECの存在を知らない、などの理由で自社ECにたどり着いていない消費者が多いと思われます。

これまで、デジタルチャネルといえばyahooやGoogleなどブラウザの「スタート画面」を押さえた者が勝ちと言われてきましたが、従来のブラウザで自発的に検索する行為自体が減少しつつあり、SNSや動画サイトなどでの受動的な情報収集をしたり、またSNS内で検索したりといった行動に変化してきていると予測しています。

特に、「検索する場所」は大きく変化しています。ブラウザの検索結果からコンテンツに到達していた時代から、今やニーズからダイレクトにコンテンツにたどり着くようになっているため、これまでの「ニーズにリーチさせるプロセス」が存在しなくなってきているのです。

ユーザーを直接引き込む仕組み作り

BtoC領域では情報に接触、認知してから訪問するまでが極めて短縮化されており、このプロセスに対応したECのリーチ方法が求められているといえます。
ここで、新しいECシステムの考え方である「ヘッドレスコマース」を導入いただきたいと考えています。
ヘッドレスコマースとは、ユーザーのタッチポイントをすべてECに変える手法です。

  • キャンペーンページなどのLP
  • 店舗スタッフの発信コンテンツなどのUGC(User Generated Content)
  • 製品ページ
  • ブランディングページ
  • 店頭サイネージ

といった様々なコンテンツにEC機能を持たせることで、ニーズからの動線を最小限に短縮することができます。

お客様のいる場所が変化しているのであれば、その場所で購買できるようにしてあげることで、「集客」という課題を解決できるのではないかと考えています。
フロントエンドとECシステムを切り離し、API連携させることでヘッドレスコマースは実現できます。
「ECの集客」という従来の発想を切り替え、お客様のニーズにあったタッチポイントを量産していくことが今後自社ECを拡大していくうえで重要となっているのです。

EC事業の拡大戦略~決済手段の選び方と必要な不正対策~

——SBペイメントサービス株式会社は、6大国際ブランドに対応したカード決済など様々な決済手段を一括導入可能な決済代行会社です。澤中寿千氏によるセッションでは、EC事業の拡大を検討されているEC事業者に向け、決済手段の選び方と必要な不正対策について解説されました。

ユーザー行動の変化

感染予防の観点から、リモートワークやオンライン授業が普及しつつあるなか、購買行動も家にいながらにして行えるEC利用が増えて来ました。生活必需品だけでなく、音楽や動画といったデジタルコンテンツをサブスクリプションで楽しむケースも多くなってきています。

また、オリンピックなどの大型イベントに向けてキャッシュレス決済を政府が推進しておりましたが、非接触での決済手段が現金決済よりも感染予防に有効とされ、普及速度が速まった印象です。

当社が2021年夏に実施したユーザーアンケートでは、コロナ禍においてEC利用が増えたと回答した方は全体の3割超、特に10代~30代の増加率が顕著でした。

コロナ禍の影響もあってEC市場は年間11%の伸びが予測されており、今後も拡大していく市場に対して、ECの事業者様はどのように対応していくべきかが大きな課題になってくるでしょう。

ユーザーの希望する決済手段を揃える

2018年と2020年に行った決済に関するアンケート調査を比較してみますと、よく利用する店舗での決済手段として「PayPay、楽天Pay、LINEPay」が大きく増加しており、これをそのままオンライン決済でも利用しているという結果がでています。
ECサイトでは希望する決済手段がない場合「他のネットショップで購入する、購入しない」など6割が離脱すると言われています。ユーザーの希望する決済手段を揃えることが重要なファクターなのです。

認知度が一番高いオンライン決済がPayPayです。導入された企業様では、導入以前よりも売上が6%から最大20%まで増加しています。

ECにおいて必要な不正対策

EC市場の拡大に伴って、クレジットカードの不正被害も増えています。フィッシングの巧妙化や転売目的の組織的な不正の増加、ダークウェブ(闇サイト)でのクレジットカード番号や個人情報の売買など、様々な手口で不正利用が行われています。

こうした不正利用に対し対策を施さない場合のリスクは、商品の詐取に加え、売上が上がらないチャージバック被害という二重の損害となります。
また、対策を講じずに不正利用が続くと、クレジットカードのブランド毀損や、経済産業省のセキュリティガイドラインの観点からクレジットカード取引の契約が解除される場合もあります。

このため、3-Dセキュアなどの本人認証、セキュリティコードによる券面認証、不正配送先情報の蓄積、不正検知システムによる行動・属性分析がる非対面不正利用対策としてクレジットカード・セキュリティガイドラインで定められています。

参考:「クレジットカード・セキュリティガイドライン」 https://www.j-credit.or.jp/security/safe/plan.html

このうち、不正対策として不正検知システムをご提案いたします。

AI不正検知

決済のうち99.9%は通常の決済ですが、ほんのわずか1%に満たない不正でも見過ごすわけにはいきません。ところが、通常のECのサイト業務に加えて、膨大なデータの中から不正検知を目見当で行っている事業者様も多くいらっしゃいます。

この工数を低減するサービスとして、SBペイメントサービスではAIと決済ビッグデータを活用した不正検知サービスを提供しています。

事業者様独自の不正検知ルールを設定し、疑わしい決済について与信取得前に3Dセキュア認証を行ったり、そもそもブロックをするという内容になっています。

画像引用:https://www.sbpayment.jp/solution/security/ai_fraud_detection/

AI不正検知を導入された企業様では、年間100万円以上の不正利用を防げたといった事例があります。

多面的、重層的な不正対策の実施が不可欠となっていますので、ぜひご検討いただけますと幸いです。

まとめ

1、EC市場は拡大傾向だが、自社ECでは集客、売上共に伸びが見られないという課題がある
認知されていないことや購買プロセスに障壁があることが原因
→「検索する場所」が大きく変化、検索しないユーザーが増えている
2、情報に接触、認知してから訪問するまでが短縮化されている
ユーザーのタッチポイントをすべてECに変える手法「ヘッドレスコマース」が有効な施策
→ユーザーのいる場所ですぐに購買させることで「集客の課題」を解決
3、EC市場は年間11%の伸びが予測される中、決済や不正利用対策に不安がある事業者が多い
クレジットカード以外の決済手段は不要か、不正利用対策が必要か、といった問い合わせが寄せられる
→ユーザーの希望する決済手段を揃え、不正利用検知サービスによる多面的、重層的な不正対策の実施が不可欠

登壇社紹介

SBペイメントサービス株式会社 【HP】https://www.sbpayment.co.jp/
SBペイメントサービスは、ソフトバンクグループの決済業務を一手に担い、その大規模なトランザクションへの対応の中で培われたシステムや業務におけるナレッジをもって、お客さまへ確かなサービスを提供いたします。
株式会社エスキュービズム
「Retail Innovation」をコーポレートスローガンに掲げ、流通小売業をはじめとする企業のICT/DX推進、オムニチャネルやOMOなど次世代型ビジネスモデルの課題解決を実現するシステムベンダーです。リアル店舗とECシステム、コールセンターなど、複数チャネルの在庫・オーダーマネジメントが実現可能な自社開発システムパッケージを有しているため、完全ワンストップで企業のDX推進、デジタル化、オムニチャネル/OMO対応のシステム導入を支援いたします。