2021年10月28日、通販物流代行、物流コンサルティング、物流システム開発・導入を行う株式会社イー・ロジットと、タブレットPOSレジシステムやEC/DX/OMO/オムニチャネルのプラットフォーム提供を行う株式会社エスキュービズムの2社が、「オムニチャネルの効果を最大化する物流・受取・DX戦略」というテーマでオンラインセミナーを開催しました。
オムニチャネルが一般化するにともない、お客様のニーズや要望は多種多様になり、複数の支払い方法、多彩な顧客接点、情報の多様化などが求められるようになりました。その中で今後より大きな変化があると考えられるのが配送方法や受取方法です。
本セミナーでは、これからの時代に求められるEC、オムニチャネル、そしてそれらを盛り上げていくための物流~DXの戦略について解説しました。
コロナ後のオムニチャネル戦略
——コーポレートスローガンに「リテールイノベーション」を掲げ、企業のDXを支援する株式会社エスキュービズム。ソリューションデザイン部 部長の岩井源太のセッションでは、「これからの時代のオムニチャネル」について解説しました。
顧客行動の変化と配送・受け取り方法の変化
コロナ禍で加速したECでの購買が一般化し、定着化しつつあります。これに伴い、顧客層とそのニーズは多様化、事業者側の提供スキームも増加し様々な選択肢がユーザーに提示されるようになってきています。顧客、事業者、取り扱い商品、販売スキームなど、あらゆる局面で変化が起こる中、配送方法にも変化が見られるようになりました。
特に影響が大きかったのは、感染症対策として容認されたAmazonの置き配であったと考えます。置き配などの非対面・非接触の受け取り方法や、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)、カーブサイドピックアップ、ロボット配送などの特殊配送の事例も増加しつつあります。
BOPIS、カーブサイドピックアップはオンラインで購入し、商品受け取りを店舗や店舗駐車場で行うタイプのサービスです。ロボット配送は自宅前まで無人のロボットカーが行うサービスで、大手スーパーと提携しているECモールが実証実験を実施しています。
こうした特殊配送サービスはユーザーの「すぐに欲しい」というニーズを体現しており、配送されるまで何日も待つのではなく、ユーザーが能動的に受け取れるというメリットがあります。
BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)とこれまでの店頭受取との大きな違いは、店頭在庫から商品を引き渡すことです。これまでは倉庫在庫から商品をピックアップ、包装し、店舗に送付していましたが、店頭在庫に対し直接オンラインで注文することで「すぐに欲しい」ニーズに対応することができます。
カーブサイドピックアップもBOPISの一種で、ユーザーが来店した際、車から降りることなく商品を受け取れるところが特徴的です。
ただし、BOPISやカーブサイドピックアップを実現するためには、店舗の在庫情報をリアルタイムで把握していないと成り立ちません。
店舗の使い方、店舗の新しい価値の創出という側面が出てきているように感じます。
世界的に見ても、店舗の価値は緩やかに変化しています。フルサービスの店舗だけでなく、一部機能を取り出したポップアップストア、体験に特化した店舗など、いろいろなお店のあり方が生まれてきている時代でもあります。利便性が増し、顧客のニーズに応えられるような仕組みの店舗に変わってきているのです。
EC化率がコロナによって10年分加速したと言われるように、店舗の変化も加速しています。RaaS(Retail as a Service=小売のサービス化)を始めとする様々なサービスが生まれるまでになりました。店舗とリアルチャネルの変化が、オムニチャネルにも影響を与えています。
リアルは徹底的に体験価値に振り、購買行動はすべてECで行ってもらうという店舗も出てきています。
これからのオムニチャネルの形
オムニチャネルの世界では、対象とするチャネルが増加しています。ECもシングルチャネルではなく、店舗、スマホアプリ、店頭サイネージ、コールセンターなど様々なチャネルとつなげてすべてを統合し、一つのものとして捉えられるようにしよう、という流れが加速しています。これからのオムニチャネルで求められる購入~配送までの効率的な形とは、前段でお話していたBOPISでも取り上げたように、倉庫と店舗の役割の曖昧化、あるいは逆転というところになってくるでしょう。
店頭在庫をECで販売する、toC向けの出荷機能を持たせるといったように、店舗に販売以外の役割を付与するという考え方はそのひとつと言えます。
デリバリーのオンデマンド化により、お客様の近くの店舗から出荷することで配送コストを圧縮でき、翌日配送のニーズにも対応できる可能性があります。
逆に、店舗でしかできなかったアッセンブリを倉庫でも実現するなど、店舗機能を倉庫に持たせることも求められてくるでしょう。
倉庫と店舗の機能を再構築することで顧客に対し利便性の高い購買体験を提供できると考えられます。
オムニチャネルの実績とEC企業の物流相談
——イー・ロジット株式会社はインターネット通販事業者の物流代行と物流業務コンサルティングサービスを提供しています。土井 知登世氏によるセッションでは、物流業界でのオムニチャネル実績と、コロナ禍の前後で変化したEC企業の物流相談や検討基準のトレンドについて紹介されました。
オムニチャネル実績紹介
国内大手のカー用品店様で実施しているオムニチャネルの事例をご紹介します。
倉庫にはBtoC在庫とBtoB在庫があり、通常のフローではBtoC在庫はエンドユーザー向けに宅配し、BtoB在庫は実店舗出荷になりますが、タイヤやカーナビといった取り付けが必要な一部の商品は実店舗に出荷し、店舗で取付作業を行っています。同じSKUでも在庫区分が異なる管理体制になっています。
店舗に出荷する際の送り状表記に購入者様のお名前を記載することで、店舗側では店舗販売商品と切り分けて管理を行っています。システム開発を内製化しているため、受注データを条件にしたシステム制御が可能であることが当社の強みです。
また、タイヤとホイールを倉庫でピッキングし、倉庫内でセットしてから出荷しています。流通加工が可能であることも強みの一つです。
コロナ禍で変化した物流相談
イー・ロジットには日々様々な物流に関するご相談をいただきます。コロナ後、圧倒的に増加したご相談内容についてご紹介します。
1:カートやOMSとのAPI連携
コロナ以前は見積依頼が多かったのですが、コロナ以降「カートやOMSとのAPI連携はできますか」というご相談が増えてきました。
最近特に多いと感じるのはShopifyとの連携希望です。アプリを入れていただく形で、連携が可能になっています。
ネクストエンジンやクロスモールなど受注管理システムとは在庫連携が出来るというのが強みです。
また、後払い決済ツールとの連携もお問い合わせが増加しています。ご希望に応じて、API連携の開発が可能です。
2:東西2拠点での稼働
トレンドとして変わって来たのが東西2拠点での稼働です。BCP対策(※)の観点において複数拠点から出荷したいという要望が増えています。
現在、イー・ロジットでは関東に6ヶ所、関西に1ヶ所の物流拠点を構えています。関東だけでなく関西にも進出したのは、関西方面のお客様からのリードタイムを短縮したい、BCP対策として関西にも拠点がほしい、コストを削減したいというニーズにお応えした形です。
WMSで郵便番号や在庫有無によって拠点の振り分けを行うことができます。
2拠点になると在庫が膨れてしまうというデメリットがあるため、売れ筋商品だけを2拠点発送とし、それ以外は1拠点からの発送として運用されることが多いようです。
3:自社出荷の一部切り離し
以前は自社出荷か外部委託のどちらかを選択されることが多かったのですが、前述の2拠点配送と同じくBCP対策として、自社出荷以外の拠点に分散させたいという要望が増えています。売れ筋商品だけ、または保管コストを抑えるために容量の小さい商品だけを外部委託するなど、分散させる条件はそれぞれの企業によって考慮されています。
物流は企業によって商材、戦略、課題が異なります。各企業に最適なご提案をさせていただきますので、ぜひご相談いただければと思います。