セミナーレポート最新のオムニチャネル/MA戦略
〜顧客のデジタル化に合わせた企業のDX/OMO

2021年8月26日、ECサイト向けにクラウド型MA/CRMツールを提供する株式会社シナブルと、ワンストップでDX推進、オムニチャネル/OMO対応のシステム導入を支援する株式会社エスキュービズムの2社が、「最新のオムニチャネル/MA戦略」というテーマでオンラインセミナーを開催しました。本セミナーでは、オムニチャネルの世界でどのようにお客様に適切な購買体験を提供するのか、DX/OMO/オムニチャネル時代に顧客接点をどのように活用するべきかなど、これからの時代に求められる購買体験を作り出し、提供するかについて解説しました。

新時代の自社EC販売戦略

——コーポレートスローガンに「リテールイノベーション」を掲げ、企業のDXを支援する株式会社エスキュービズム。ソリューションデザイン部 部長の岩井源太のセッションでは、「最新のオムニチャネル戦略」について紹介しました。

環境の変化に応えるオムニチャネル

2020年のコロナ禍以降、多くの消費者の購買行動が変化し、ECを使っていなかった層もネットで積極的に買い物をするようになりました。コロナ以前に予想されていた未来では、もう少し穏やかにデジタライゼーションが進んでいくと考えられていましたが、消費者行動の変化は世界的に見ても加速しており、5年~10年分の進化をしている国が多くなっています。

また、スマホの利用率も増加し、大手リテール企業の売上のうち、7割がスマホからの購買だったというレポートも出ております。総務省の「通信利用動向調査(令和2年版)」では、インターネットの利用目的で「商品・サービスの購入」が55.7%と上位項目に挙がっています。

こうした情報を読み解きますと、

  • ECの利用者層が多様化
  • デバイスがスマホメインに変化
  • ECやデジタルチャネルへの接触理由が分散化

といった傾向が見えてきます。

こうした中、オムニチャネルのあり方も変化してきています。
これまでのオムニチャネルは、「チャネルの垣根を取り払う」ことを目的としており、購買情報連携などによる総合的な利便性向上を目指す施策として進められてきました。リアルな店舗しかなかったシングルチャネルの時代から、ECや電話通販などのマルチチャネルの情報が連携されるようになり、少しずつ統合されてきたのが今のオムニチャネルです。

ここにOMOという概念が加わることで、オムニチャネルは一歩先へ進もうとしています。オムニチャネルであることが前提条件になり、「何かをするための基盤」としてプラットフォーム機能が求められるようになってきました。
統合するべき対象チャネルも増加し、ECと実店舗だけでなく、コールセンターやスマホアプリ、店頭のデジタルサイネージなどリアルとデジタルの区別なくすべてのチャネルを束ねていく必要があります。

さらに店舗で購買したお客様にアプリなどからすぐにアプローチしたり、マイページに購買情報を即時反映したりするために、データ連携は1日1回ではなくなるべくリアルタイムで行うようになっています。連携後のステップも多様化しており、オムニチャネルの世界にデータを入れた後、うまく活用していきましょう、という流れになってきています。

「ユーザーのいる場所」が変化

消費者の利用デバイスがスマホに移行し、必ずしも検索エンジンで検索してからコンテンツにたどり着くとは限らなくなりました。以前と異なり、SNSやアプリからダイレクトにアクセスするユーザーが増加し、ニーズからコンテンツまでのステップが短縮されているのです。こうした状況に適応できるようなECシステムや仕掛けを作らなければ、効果が生まれにくくなっています。

オムニチャネルもユーザーの変化に合わせて変わっていく必要があるのです。

これからのオムニチャネル

消費者ニーズの細分化やリアル店舗での購買行動の変化があり、それに適応するためには「システムをどう作るか」ではなく「何をするのか」が重要な時代になってきました。オムニチャネルで統合したデータを使って戦略を立て、リアル起点でサービスを構築していくことが必要です。こうしたデジタルとリアルを行き来する購買行動を、海外では「ハイブリッドショッピング」といった言葉で表しています。様々なチャネルをホップしながら買い物をするには、チャネルが統合されていなければなりません。
OMOの概念でもありますが、どのチャネルからお客様が接触してきたとしても、一人のお客様と捉えてサービスを提供できる仕組みであるべきです。

チャネルホップによる利便性を追求するには、店舗の機能を販売に限定させないことが重要になってきます。そしてリアルを起点にしたマーケティングを実施し、積極的なチャネルホップを促進します。店舗のデジタルマーケティングをECの仕組みを利用して実行する、といった施策がこれからのオムニチャネルになってくるでしょう。

さらにオンラインの複数チャネルでのホップを効果的にするには、ヘッドレスコマースが有効であると考えています。ヘッドレスコマースはこれまでのECシステムとUIの概念を大きく変え、複数のUIに対し切り離されたECシステムをそれぞれAPIで接続する仕組みです。

このように、リアルの課題をオムニチャネルの仕組みを使って解決・改善していくべきと考えています。今までなかったデータを集め、デジタル起点の仕組みを作ってリアルの世界を盛り上げる、ということが重要なのではないでしょうか。

オムニチャネルでのMAツールの使い方

——ECサイト向けにクラウド型MA/CRMツールを提供する株式会社シナブル クライアントコミュニケーション&マーケティング部 部長の曽川 雅史氏のセッションでは、「MAツールを使ってお客様に心地良い体験を提供する方法」について解説されました。

MAツールの特徴

本日はマーケティングオートメーションツール(MAツール)を「販売促進を自動化するツール」として定義しお話いたします。

MAツールはデータを収集し、分析/検証を行い、その結果を販促施策として実行するプログラムです。収集するデータはECサイトや実店舗の購買データ、顧客データ、商品データ、アクセスログなどです。収集したデータを分析し、設定したセグメントに従ってターゲットを抽出、様々なチャネルで販促を行っていくという流れを一気通貫でできるのがMAツールです。

MAツールの活用例として「カゴ落ちメール」を紹介します。ECサイトを運営されている企業様では鉄板の施策と言われるカゴ落ちメールですが、単純にカゴ落ち商品の案内だけをするのではなく、MAツールによって関連商品を挿入することで開封率、クリック率、コンバージョン率を向上させることができます。
店舗で商品を購入したお客様に、LINEやメールで翌日関連商品情報を配信したり、ECサイトを訪問した際にポップアップで同一の案内をしたりといった施策も実行可能です。
当社が提供しているMAツール「EC Intelligence」では、オフラインのDMを配信する機能も新たに追加し、同一メッセージをオンライン、オフライン共に一人の顧客に対し送ることができるのが特徴です。

画像引用:https://www.value-press.com/pressrelease/278840

MAツールとは、ひとりひとりのお客様に適したタイミング・チャネル・コンテンツで販促メッセージを届けるものです。
しかし、お客様のニーズに合わない販促メッセージを店舗やECの担当者が送ってしまい、機会損失が起こる可能性もありますので、まずオムニチャネル販促を行うための準備が必要になってきます。

オムニチャネル販促の準備

オムニチャネル販促を行うための準備として、「店舗とECのID統合」「店舗購入情報をMAツールに統合」「お客様のこと、自社のことを知る」の3つのポイントがあります。

1:店舗とECのID統合

オムニチャネル施策の一環として、店舗が持っている顧客情報とECが持っている顧客情報を統合し会員基盤にします。

2:店舗購入情報をMAツールに統合

販売管理システムとの直接連携や、ポイントシステムとの連携など、手法は様々です。

3:お客様のこと、自社のことを知る

会員IDを統合し、システム連携を行ってオムニチャネルの基盤を作っても、お客様のことや自社のことを知らなくては販促施策は立てられません。顧客層の分析、購買商品の分析でお客様のことを知り、自社のブランドコンセプトや強みを改めて振り返ること、自社商品がどのように使われているかといった調査によって、新たな価値を生み出すことができます。

お客様はネットと店舗の両方を当たり前のように利用していますので、会員基盤、ポイント基盤の整備が事前に必要になってきます。
そのうえで、オムニチャネル施策は4つのポイント「いつ(タイミング)・どこで(チャネル)・何を(コンテンツ)・どのくらい(頻度)」で考えて立案することが重要といえます。

まとめ

1、オムニチャネルはOMOの概念が加わって一歩先へ進もうとしている
これまでのオムニチャネルは、「チャネルの垣根を取り払う」ことを目的としていた
→オムニチャネルであることが前提条件になり、「何かをするための基盤」としてプラットフォーム機能が求められるように
2、消費者ニーズの細分化やリアル店舗での購買行動の変化に対応する必要性が高まっている
「システムをどう作るか」ではなく「何をするのか」が重要な時代
→リアルの課題をオムニチャネルの仕組みを使って解決・改善していくべき
3、オムニチャネル販促を適切に行うには
会員基盤、ポイント基盤の整備を事前に行い、オムニチャネル施策を立案する
→「いつ(タイミング)・どこで(チャネル)・何を(コンテンツ)・どのくらい(頻度)」を考えて実行することが重要

登壇社紹介

株式会社シナブル 【HP】https://www.scinable.com/
「顧客のショッピング体験をより良くし、EC事業の成功に貢献する」というスローガンでクラウド型MA/CRMツールを提供。
株式会社エスキュービズム
「Retail Innovation」をコーポレートスローガンに掲げ、流通小売業をはじめとする企業のICT/DX推進、オムニチャネルやOMOなど次世代型ビジネスモデルの課題解決を実現するシステムベンダーです。 リアル店舗とECシステム、コールセンターなど、複数チャネルの在庫・オーダーマネジメントが実現可能な自社開発システムパッケージを有しているため、完全ワンストップで企業のDX推進、デジタル化、オムニチャネル/OMO対応のシステム導入を支援いたします。