新時代の自社EC販売戦略
——コーポレートスローガンに「リテールイノベーション」を掲げ、企業のDXを支援する株式会社エスキュービズム。ソリューションデザイン部 部長の岩井源太のセッションでは、「最新のオムニチャネル戦略」について紹介しました。
環境の変化に応えるオムニチャネル
2020年のコロナ禍以降、多くの消費者の購買行動が変化し、ECを使っていなかった層もネットで積極的に買い物をするようになりました。コロナ以前に予想されていた未来では、もう少し穏やかにデジタライゼーションが進んでいくと考えられていましたが、消費者行動の変化は世界的に見ても加速しており、5年~10年分の進化をしている国が多くなっています。
また、スマホの利用率も増加し、大手リテール企業の売上のうち、7割がスマホからの購買だったというレポートも出ております。総務省の「通信利用動向調査(令和2年版)」では、インターネットの利用目的で「商品・サービスの購入」が55.7%と上位項目に挙がっています。
こうした情報を読み解きますと、
- ECの利用者層が多様化
- デバイスがスマホメインに変化
- ECやデジタルチャネルへの接触理由が分散化
といった傾向が見えてきます。
こうした中、オムニチャネルのあり方も変化してきています。
これまでのオムニチャネルは、「チャネルの垣根を取り払う」ことを目的としており、購買情報連携などによる総合的な利便性向上を目指す施策として進められてきました。リアルな店舗しかなかったシングルチャネルの時代から、ECや電話通販などのマルチチャネルの情報が連携されるようになり、少しずつ統合されてきたのが今のオムニチャネルです。
ここにOMOという概念が加わることで、オムニチャネルは一歩先へ進もうとしています。オムニチャネルであることが前提条件になり、「何かをするための基盤」としてプラットフォーム機能が求められるようになってきました。
統合するべき対象チャネルも増加し、ECと実店舗だけでなく、コールセンターやスマホアプリ、店頭のデジタルサイネージなどリアルとデジタルの区別なくすべてのチャネルを束ねていく必要があります。
さらに店舗で購買したお客様にアプリなどからすぐにアプローチしたり、マイページに購買情報を即時反映したりするために、データ連携は1日1回ではなくなるべくリアルタイムで行うようになっています。連携後のステップも多様化しており、オムニチャネルの世界にデータを入れた後、うまく活用していきましょう、という流れになってきています。
「ユーザーのいる場所」が変化
消費者の利用デバイスがスマホに移行し、必ずしも検索エンジンで検索してからコンテンツにたどり着くとは限らなくなりました。以前と異なり、SNSやアプリからダイレクトにアクセスするユーザーが増加し、ニーズからコンテンツまでのステップが短縮されているのです。こうした状況に適応できるようなECシステムや仕掛けを作らなければ、効果が生まれにくくなっています。
オムニチャネルもユーザーの変化に合わせて変わっていく必要があるのです。
これからのオムニチャネル
消費者ニーズの細分化やリアル店舗での購買行動の変化があり、それに適応するためには「システムをどう作るか」ではなく「何をするのか」が重要な時代になってきました。オムニチャネルで統合したデータを使って戦略を立て、リアル起点でサービスを構築していくことが必要です。こうしたデジタルとリアルを行き来する購買行動を、海外では「ハイブリッドショッピング」といった言葉で表しています。様々なチャネルをホップしながら買い物をするには、チャネルが統合されていなければなりません。
OMOの概念でもありますが、どのチャネルからお客様が接触してきたとしても、一人のお客様と捉えてサービスを提供できる仕組みであるべきです。
チャネルホップによる利便性を追求するには、店舗の機能を販売に限定させないことが重要になってきます。そしてリアルを起点にしたマーケティングを実施し、積極的なチャネルホップを促進します。店舗のデジタルマーケティングをECの仕組みを利用して実行する、といった施策がこれからのオムニチャネルになってくるでしょう。
さらにオンラインの複数チャネルでのホップを効果的にするには、ヘッドレスコマースが有効であると考えています。ヘッドレスコマースはこれまでのECシステムとUIの概念を大きく変え、複数のUIに対し切り離されたECシステムをそれぞれAPIで接続する仕組みです。
このように、リアルの課題をオムニチャネルの仕組みを使って解決・改善していくべきと考えています。今までなかったデータを集め、デジタル起点の仕組みを作ってリアルの世界を盛り上げる、ということが重要なのではないでしょうか。