2020年11月5日から、デジタルマーケティングに関わるソフトウェア製品を自社開発しているスプリームシステム株式会社と、ワンストップでDX推進、オムニチャネル/OMO対応のシステム導入を支援する株式会社エスキュービズムの2社が、「データ×DX – 新デジタル時代への準備と対策」というテーマで全三回にわたりオンラインセミナーを開催しました。第三回目となった本セミナーでは、日々変化する消費者に対し店舗でどのような購買体験を提供するべきか。店舗でリアルなデータ取得の方法と、そのデータの活用の仕方、DXを進める上で考慮すべき事柄や、新たな顧客接点の創造方法について解説しました。
動線分析ツール「Moptar」を活用したOMOの実現
——スプリームシステム株式会社はソフトウェアとサービスを活用しOMO推進を目指しています。久野 祐治氏によるセッションでは、動線データを活用した、これからの店舗のあり方について解説が行われました。
これからの店舗のあり方
皆さまもよくご存じのとおり、コロナ禍により店舗での購買が減りECの購買が増加するなど、消費者行動に変化が起こっています。しかし、店舗には依然「ブランド認知向上」「商品を試せる」といったメリットがあり、今後はデジタル接点を軸に店舗(リアル)をツールとして使う動きが加速していくでしょう。
こうしたOMO(Online Merges with Offline)の世界において、スプリームシステムが提供する動線分析ツール「Moptar」をどのように活用していくかをお話していきたいと思います。
従来のオンラインでのレコメンドでは、WEBページの閲覧情報を取得・分析することによってお客様にメールやプッシュ通知でおすすめをお知らせし、WEB購入につなげていました。ここにOMOの概念を取り入れた場合、お客様が店舗来店時にどのような行動を取ったかをデータとして取得し、分析してレコメンドを行います。
売場の立ち寄りや滞留、手に取ったけれど購入しなかった商品など、購買情報以外の店内行動、つまり動線を分析するツールとしてMoptarを開発いたしました。
動線分析ツール「Moptar」の概要
Moptarは主に「人検出」「動線追跡」「データ解析・活用」の3つの要素で構成されています。高精度な動線検知、追跡、データ解析によって店舗の課題を可視化し、店舗改善施策につなげていくことができるツールになっています。
高精度な動線追跡
Moptarでは人検出を行う手法として、センサーまたはカメラ+AIを採用しています。そのうち、店舗での活用に向いているのはセンサー方式です。店舗は売場の陳列棚や装飾などの遮蔽物や人が密集しやすい環境のため、センサーの方が高精度の動線追跡が可能な手法として提案しています。また、複数のセンサーを跨いでの動線追跡が可能になっています。
長時間の追跡にはパーティクルフィルター方式を用いており、あらかじめ動線を予測して追跡の継続を実現しています。
リアルタイム検知&アクション
Moptarでは来店客の特定行動を定義し、検知した場合にアクションを起こすことができます。ある売場に人がn秒以上滞留していたら接客の必要ありとしてアラートを出す、サイネージでその来店客が関心のあるであろう商品情報をレコメンドする、といったアクションを起こす機能です。
すぐに使える動線分析テンプレート
入店者数と購入者数は比較的検知しやすいデータですが、その間の動線はこれまで見えない部分でした。Moptarを導入することにより、動線情報の可視化を行い店舗の課題を見える化し、店舗施策の改善のPDCA高速化につなげていきます。
Moptarでは施策改善のために、多彩な分析ツールを用意しています。動線マップやヒートマップといったビジュアライズされた画面や、リアルタイムでカウントするようなツールを使いながらアクションを起こしていただけるのが特長です。
Moptar活用例1:コンビニ店での売場改善
平均停止時間と買上率を軸として売場を分類し、分類ごとに必要な改善施策を実施した例をご紹介します。買上率は高いが平均停止時間が短い売場は「効率的な売場」と分析でき、新商品投入など来店客の足を止める施策を実施しました。買上率、平均停止時間共に低い売場では販売商品の変更やPOP掲出などで来店客の興味を引く対策を行いました。
このように、KPIを定めて改善施策を実施しやすくなる効果があります。
Moptar活用例2:アパレル店での購買プロセス分析
顧客行動における成功要因を分析した例では、入店から購買に至るまでの来店客のプロセスを分解し、それぞれにおけるファネルのようなイメージで人数を可視化しました。仮説を立てて改善につなげる活用事例といえます。
Moptar活用例3:顔認証システム併用による属性付与
センサーと別にカメラを設置し、顔認証システムと併用することで動線情報と顧客の属性情報を紐づけていくことができます。
Moptar活用例4:コスメ店での接客支援
接客支援としてMoptarを活用いただいた例です。来店客がどの売場に多く滞在したかをリアルタイムで可視化し、接客後に関連商品をおすすめするといった興味に基づいたカウンセリングを行うことができます。
Moptar活用例5:サイネージによるOne To One広告
店内行動分析により顧客ごとの商品に対する興味関心度を取得、サイネージに相関性のある商品情報を広告として表示する例です。
動線分析ツール「Moptar」を活用し、リアルとデジタルを融合させる
Moptarによってオンラインとオフラインのデータを統合した買い物体験の向上が可能になります。来店時にLINEのQRコードを活用した個人認証を行い、店内では動線分析を基にしたサイネージによるOne To Oneレコメンド、帰宅後にはメールやアプリによるOne To Oneレコメンドといったように、リアルとデジタルが融合したOMO施策が実施できます。
第一回、第二回でご紹介してきた高機能MAツール「Aimstar」に動線分析ツール「Moptar」で取得したデータを組み合わせ、各チャネルでの販促につなげることができます。
弊社ではこの二つの製品を使って企業様のOMO施策を協力にご支援させていただいております。
ご興味ございましたら、ぜひお問い合わせください。
Afterコロナに押し進めるべきストアデジタル
——コーポレートスローガンに「リテールイノベーション」を掲げ、企業のDXを支援する株式会社エスキュービズム。ソリューションデザイン部 部長の岩井源太のセッションでは、「店舗のOMO、店舗のデジタル化」について解説しました。第一回、第二回では主にアフターコロナにおける自社ECのあり方についてお伝えしてきましたが、第三回は店舗について考えていきます。
DXで考えるべきこと
店舗のデジタル化とはどういうことかというと、「様々な情報をデータ化すること」といえます。さらにデータ連携まで行い環境整備することがDX推進といえるでしょう。
情報の生まれる場所、加工する場所、活用する場所をデジタル化する必要があります。
このうち、スプリームシステム様の紹介されたMoptarは情報の発生場所、加工場所に対して非常に有効なツールといえます。これまでデータ化することができていなかったお客様の店内での行動を情報にし、活用できるように加工することができるようになります。
情報の発生場所を押さえるには、ECや店舗、コールセンターなど全てのチャネルでの行動を押さえなくてはなりません。多角的なこれらのデータを1DBに統合することで活用につなげることができます。
また、ECや店舗、倉庫の在庫情報も一元管理することで最良のデリバリーによる最良の販売実績に結びついていきます。
これらの情報は、統合しただけではICT導入の延長線上の話であり、DXとまではいかないのが注意すべきところです。集めた情報をどのように分析して、どのように活用していくのかを考えていかねばならないはずです。
Moptarのような動線分析ツールから得られた分析結果を元にEC購買へ繋げるレコメンドを行っても良いですし、店舗スタッフの接客実績から得られた情報を分析し、販促アプローチを行うのもよいでしょう。しかし、このような売上を伸ばすための「攻めのDX施策」は現在のところ成功例としてはまだ多くありません。
DXならではの課題とその解決策
では、なぜ成功例が少ないのかというと、データ連携ができ、デジタル化が実現したとしても多くの企業が
A:何をすればいいのかわからない
B:目標を設定しても実現方法がわからない
C:実行しても成果が出ない
といったDXならではの課題に阻まれているからです。このような課題を解決するために必要なことを次でご紹介します。
A:何をすればいいのかわからない
既にコロナ禍以前から顧客の価値観は多様化し、大衆的なアプローチではリーチできなくなっています。自社の顧客のニーズの変化をタイムリーにキャッチし続ける必要があるのです。
気づきを得るために広域にデータを集めることと、目的を設定して精度の高いデータを集めることを両軸でやっていく必要があります。
B:目標を設定しても実現方法がわからない
自由度の高いデジタル施策の実現や新しいビジネスモデルの創出には時間が、選択肢の多さ、適切なサービスを見つけ出す難易度が上がっています。実現に時間をかけすぎるとビジネスチャンスが失われるリスクもあります。
DXの世界では実現した結果が予測できないというケースが多くあります。そのためPoCで比較検討し、最適な方法を見つけ出すことが有効です。
C:実行しても成果が出ない
DXは複雑なパラメータが多く、様々な課題が絡み合い難解となり、全体がつかみにくいことが多々あります。要件定義書などのドキュメントでは理解が困難な施策でも、UXプロトタイピングで施策を視覚的に検証・検討することで開発前に改善点を見つけ出すことができます。開発前にブラッシュアップし、狙った効果を導き出せると考えます。
DXならではの課題とその解決策
コロナの影響が続く中、店舗のあり方が問われています。店舗に人が来ない、店舗でものが売れないといった状況を変えるためには、これまでの店舗のあり方を再検討し、社会、消費者の変化に合わせた店舗設計が必要になっています。
エスキュービズムが支援したPoCの事例では、試着室内のタブレット型セルフレジでそのまま購入、着たまま購入を実現する「試着ショップ」や、スマホで注文決済、24時間営業で受け取れる「非対面式ロッカー型ショップ」などがあります。これらは実際にやってみないとお客様に受け入れられるかどうか分からない、企業様にとって新しいビジネスモデルでした。
また、店舗スタッフの空いたリソースの有効活用としてオンライン施策で集客を行ったり、店舗在庫を活用したブラックストア化を検討したりと、今までとは違う店舗の環境づくりも重要な観点です。
社会、消費者の変化が大きく起こる中、これまでの店舗の形に囚われず、攻めのDXで新たな顧客接点を創出していくべきでしょう。