セミナーレポート店舗接客をデジタル上へシフトする
〜OMOを実現するオンライン接客での新たなコミュニケーションのかたち〜

2020年11月26日、WEB接客ソリューションやAIチャットボットの開発・運営を中心に、チャットセンターの運営受託、コンサルティングを統合的に提供する株式会社空色と、ワンストップでDX推進、オムニチャネル/OMO対応のシステム導入を支援する株式会社エスキュービズムの2社が、「店舗接客をデジタル化へ」というテーマでオンラインセミナーを開催しました。
オンライン接客をキーワードに、オンラインでの店舗接客のノウハウの生かし方や、顧客とのコミュニケーションを大切にした新たなECのカタチについて解説を行いました。

OMO成功のカギとなるオンライン接客の取り組み方

——WEB接客ソリューションの開発・運営を中心に、今までない新しい購買体験の実現を支援している株式会社空色。代表取締役 中嶋 洋巳 氏のセッションでは、OMO成功のカギとなるオンライン接客の取り組み方について解説されました。

そらいろが解決する課題:
変化する顧客接点

コロナウィルス蔓延の影響を受け、お客様接点が大きく変わってきているなか、OMOの考え方を用いてオンラインだけでなくオフラインへ、オフラインだけでなくオンラインへ、お客様をいかに誘導していくのか、そのためのオンライン接客の取り組み方や事例について本日はご紹介いたします。

MS&コンサルティング社が発表した集計レポートでは、コロナ禍におけるECサイトと店舗の利用頻度についてECサイトの利用頻度が以前より増えた、と回答した方は全体の約25%。対して店舗の利用頻度が以前より減った、と回答した方が全体の23%となっています。
当社のお客様でも、売上の前年対比が80~90%となっている店舗様が多く見られます。コロナ禍によってお客様の購買行動が変化し、それが慢性的に続いていくと想定されています。
その結果、店舗の縮小や事業の見直しといったニュースもよく取り上げられるようになっていますが、店舗を閉じることで無くしてしまいかねないものが2つあると我々は考えています。

  • 店舗で勤務されていた販売員の雇用機会
  • 店舗に訪れていたお客様

店舗がなくなることで、これまで来店されていたお客様とブランドとの接点が希薄になってしまう恐れがあります。

店舗の閉店を計画する場合でも、閉店される3ヶ月前からお客様向けに販売員から「オンラインでも接客ができるようになりました」と告知し、リアルで構築していた関係性を、オンライン上に展開することで、お客様と販売員を繋ぎとめることが、空色の提案する課題へのアプローチです。

そらいろが解決する課題:
販売チャネルで異なる購買単価

当社のお客様へのヒアリングで、ECと店舗の購買平均単価を比較した際、ECの購買単価は店舗の70~80%程度というケースが多くみられました。購買チャネルが広がっても、購買単価を下げずに購入いただけるようなサービス提供や、UI/UXを提供いただくというのは今後大きな課題になっていくと思われます。

そらいろが解決する課題:
ECサイトでは来訪頻度が下がる?

ECサイトで年間二回以上購買いただけるお客様を作る難しさについても課題と考えます。来訪頻度を高め、継続して購買してくださるお客様の割合を高めていくために、店舗型の接客がいかに大きな価値を持っていたかを実感されている方も多いでしょう。チャネルシフトが起こり店舗自体の顧客接点が減少していく中で、店舗で提供されていた接客をいかにデジタルでも届けていくかは、購入頻度を上げていくためにも重要な要素だと考えています。

人口減少社会における重要な指標

店頭販売とEC販売の違いは、購入率、リピート率、単価が店舗よりも低いことから、接客にあると考えます。ECサイトに来訪されてから購入に至るまで、オンライン接客をしっかりと行うことで効果を発揮します。初めて来訪されたお客様にブランドを知っていただくところから、購入に関する不安を解消し、購入、そしてもう一度来訪するまで、オンライン接客の会話のなかで行っています。

今後日本においては、人口が減少する社会となっていきます。新規顧客の獲得も重要ですが、お客様との関係性を長く続けていくこと、そしてLTVを上げていくことが最も解決、実現していきたい価値なのです。

オンライン接客事例の紹介

事例1:アパレル企業との取り組み

「店頭でやっている接客をいかにアプリケーションの中でやっていくか」をテーマにしています。公式アプリの商品ページでも、メインの商品画像のすぐ下に問い合わせボタンを設置し、AIチャットボットが24時間対応しています。また、午前10時~午後23時の間は店舗スタッフ様と当社のチャットスタッフがシフトを組んで、お客様のチャット対応を行っています。
チャット利用のお客様ではEC上はもちろん、店舗に来店した際でも購入率が非常に高くなってきています。購買単価が高価格帯になるほど購買意欲が強い傾向にあり、また、そうした商品は実際に店舗で試したくなるため来店されることが多い傾向が出ています。
セールスサポートからカスタマーサポートまで、メールと電話だけでなくチャットサービスで提供している事例です。

事例2:金融企業との取り組み

チャットボットと有人対応を組み合わせたデジタルコミュニケーションを提供している金融企業様では、導入後、実際のお客様とのチャット会話ログを学習させることでチャットボットが成長し、チャット応対品質が向上した事例です。

事例3:メーカーとの取り組み

店舗スタッフに対面での質問がしにくい商品について、デジタル診断ツールを提供しています。オンライン上で診断を受ける中で、商品やブランドへの親近感を高めるD2Cの取り組みです。

このように、店舗で提供していた接客をデジタルで提供することで、ECでのCVRが20%以上向上しているという結果が出ています。また、コロナウィルスの影響でウィンドウショッピングがしにくい状況が続いていますが、事前にデジタルで接客を行うことで、目的型来店に送客することができるようになり、チャットを利用されているお客様の店舗での購入率が30%以上まで高められているという事例もでています。

店舗の接客とオンライン接客を組み合わせ、チャネルを横断したCXを提供することでCVRは向上すると考えています。

顧客とのコミュニケーションを大切にした新たなECのカタチ

——コーポレートスローガンに「リテールイノベーション」を掲げ、企業のDXを支援する株式会社エスキュービズム。ソリューションデザイン部 部長の岩井源太のセッションでは、店舗接客をデジタルでアシストするECについて解説しました。

1、コロナで変化したECの環境

コロナ禍において、日本や世界各国でEC市場の規模拡大が報告されています。ECの成長は各国で加速度が上がっており、数年から10年先に進んだと発表された国もあるほどです。
これまでECを利用してこなかった層も取り込み、さらに定着化しつつあり、店舗での購買行動は以前のようには戻らないと予想されます。

お客様の行動起点がオンラインに移り、本来であれば実現にもっと時間がかかると思われていたOMOの世界が非常に身近になってきています。デジタルがリアルを包含し、純粋なオフライン状態がなくなるOMOの概念が現実になる中、過去から続く消費者習慣や、自社の販売モデルを基にしたビジネス設計は見直さなくてはならない時期にきています。

2、アフターコロナでやめるべき大手ECの模倣

自社ECを運営するに当たり、大手ECを参考にしていないでしょうか。大手ECは大量販売に最適化されているため、「便利、お得感」に特化した販売モデルになっています。そのために、大手ECは検索やレコメンドなど、オンライン行動に特化した顧客情報でアプローチをしています。
大手ECとは企業戦略や考え方が異なることを認識し、自社の強みを打ち出した戦略設計を行うべきです。

店舗を持っているのであれば、それが強みとなります。デジタルとリアルの両側面から顧客情報を把握することができるからです。大手ECはオンラインオンリーのため、オフライン側の情報が欠如しており、顧客の行動ケースをすべて網羅できません。
たとえば店舗接客時に得た情報を記録し、ECに反映させることができれば、大手ECに対する優位性となり得ます。

3、大手ECには絶対にできないコミュニケーションを軸にしたECのカタチ

自社ECの購買行動において、お客様が商品を知ってから欲しいと思うまでのステップがいくつかありますが、デジタルだけでは取得できない顧客データを活用し、大手ECがレコメンドしかしていない部分を最適化することが重要になってきます。

EC特化型企業の戦略では、「商品を知ってから購入するまで」が最短距離で設計されています。しかし、現在消費者行動はマスから離れ、「商品を知って欲しいと思うまで」が細分化されてきているのです。顕著なのはSNSなどのコミュニケーションツールの影響力です。好きなインフルエンサーや身近な人からのおすすめを信頼して購入するなど、人に紐づく情報に基づいて消費行動を起こすケースが増えています。

お客様と店舗スタッフの出会いのオムニチャネル的考え方

この「インフルエンサーや身近な人」に、店舗スタッフをデジタルの力で位置づけられないか、ということがポイントです。

店舗スタッフのおすすめ商品をWEBサイトに陳列し、サイト上で店舗スタッフとコミュニケーションが取れることで店舗の接客をEC上で再現するパターンも考えられます。
店頭で接客を受けた人がECで購入したり、EC上で商品を知った人が店舗を訪問し目的買いをしたりといった循環が見込めます。

店舗スタッフの活動をリアルだけに縛らず、お客様が店舗スタッフのSNSなどをきっかけに購買した場合は評価する仕組みづくりなども必要になってきます。店舗スタッフをデジタルでも活用できるようにすることが、これからのECに求められる形なのではないかと考えられます。

これからのECを実現するためには二つのポイントがあります。

1、場を用意すること

自社商品をアピールする場、ECやSNSなど被リアル系接点を活用し、デジタル世界で顧客を店舗、ブランドのファンにする

2、有力なユーザーへのリーチ

店舗スタッフとユーザー(顧客)が適切に出会えるようなマッチングの仕組みを作り、インフルエンサーとフォロワーのような関係を作り出す

このポイントを押さえたECのカタチとして「ヘッドレスコマース」が最適であろうと当社は考えます。
多彩な顧客とのコミュニケーションの場を作り、「欲しい」と思ったときに買うことができるECの新しい仕組みであるヘッドレスコマースは、ECのシステムと一体化していたUI(フロント部分)を切り離し、リアルも含めた多様なチャネルと接続できることが特色です。

店舗スタッフのコーディネートコンテンツに直接買えるようにカートボタンを設置したり、商品紹介の動画があるページからそのまま購入できるような設計をしたりと、様々な施策が実施できます。
自社ECは一つではなく、ECのポップアップショップのような形で複数あった方が多様化した購買層にリーチしやすくなります。いろいろな場所で、お客様の望むタイミングでいつでも買える、そのようなECがこれから求められるのではないかと考えています。

まとめ

1、変化する顧客接点に対応したオンライン接客の取り組み方
コロナ禍による消費者行動の変化に伴い、店舗運営の戦略が見直されている
→店舗の接客とオンライン接客を組み合わせ、チャネルを横断したCXを提供することで、EC、店舗でのCVR向上を目指す
2、アフターコロナでは自社ECの強みを活用したオンライン接客が重要
オンラインオンリーである大手ECの模倣は、企業戦略やビジネスの考え方からもやめるべき
→店舗(リアル)とEC(デジタル)の両側面から得られた情報をECに反映できれば、大手ECに対する優位性が得られる
3、店舗スタッフを商品購買のきっかけとなりうる「インフルエンサー」に位置づけ
店舗スタッフをデジタルでも活用できるようにするためには、場の構築と有力なユーザーへのリーチが必要
→多彩な顧客とのコミュニケーションの場をヘッドレスコマースで構築

登壇社紹介

株式会社空色 【HP】https://service.solairo.co.jp/
チャットサービス「WhatYa」の開発・運営を中心に、チャットセンターの運営受託、コミュニケーションコマースに関するコンサルティングを統合的に提供。AI技術と人の持つ感性を掛け合わせることでコミュニケーションの可能性を最大化し、店舗・EC・電話・チャット等を横断した今までにない新しい購買体験の実現を支援しています。
株式会社エスキュービズム
「Retail Innovation」をコーポレートスローガンに掲げ、流通小売業をはじめとする企業のICT/DX推進、オムニチャネルやOMOなど次世代型ビジネスモデルの課題解決を実現するシステムベンダーです。 リアル店舗とECシステム、コールセンターなど、複数チャネルの在庫・オーダーマネジメントが実現可能な自社開発システムパッケージを有しているため、完全ワンストップで企業のDX推進、デジタル化、オムニチャネル/OMO対応のシステム導入を支援いたします。