顧客とのコミュニケーションを大切にした新たなECのカタチ
——コーポレートスローガンに「リテールイノベーション」を掲げ、企業のDXを支援する株式会社エスキュービズム。ソリューションデザイン部 部長の岩井源太のセッションでは、店舗接客をデジタルでアシストするECについて解説しました。
1、コロナで変化したECの環境
コロナ禍において、日本や世界各国でEC市場の規模拡大が報告されています。ECの成長は各国で加速度が上がっており、数年から10年先に進んだと発表された国もあるほどです。
これまでECを利用してこなかった層も取り込み、さらに定着化しつつあり、店舗での購買行動は以前のようには戻らないと予想されます。
お客様の行動起点がオンラインに移り、本来であれば実現にもっと時間がかかると思われていたOMOの世界が非常に身近になってきています。デジタルがリアルを包含し、純粋なオフライン状態がなくなるOMOの概念が現実になる中、過去から続く消費者習慣や、自社の販売モデルを基にしたビジネス設計は見直さなくてはならない時期にきています。
2、アフターコロナでやめるべき大手ECの模倣
自社ECを運営するに当たり、大手ECを参考にしていないでしょうか。大手ECは大量販売に最適化されているため、「便利、お得感」に特化した販売モデルになっています。そのために、大手ECは検索やレコメンドなど、オンライン行動に特化した顧客情報でアプローチをしています。
大手ECとは企業戦略や考え方が異なることを認識し、自社の強みを打ち出した戦略設計を行うべきです。
店舗を持っているのであれば、それが強みとなります。デジタルとリアルの両側面から顧客情報を把握することができるからです。大手ECはオンラインオンリーのため、オフライン側の情報が欠如しており、顧客の行動ケースをすべて網羅できません。
たとえば店舗接客時に得た情報を記録し、ECに反映させることができれば、大手ECに対する優位性となり得ます。
3、大手ECには絶対にできないコミュニケーションを軸にしたECのカタチ
自社ECの購買行動において、お客様が商品を知ってから欲しいと思うまでのステップがいくつかありますが、デジタルだけでは取得できない顧客データを活用し、大手ECがレコメンドしかしていない部分を最適化することが重要になってきます。
EC特化型企業の戦略では、「商品を知ってから購入するまで」が最短距離で設計されています。しかし、現在消費者行動はマスから離れ、「商品を知って欲しいと思うまで」が細分化されてきているのです。顕著なのはSNSなどのコミュニケーションツールの影響力です。好きなインフルエンサーや身近な人からのおすすめを信頼して購入するなど、人に紐づく情報に基づいて消費行動を起こすケースが増えています。
お客様と店舗スタッフの出会いのオムニチャネル的考え方
この「インフルエンサーや身近な人」に、店舗スタッフをデジタルの力で位置づけられないか、ということがポイントです。
店舗スタッフのおすすめ商品をWEBサイトに陳列し、サイト上で店舗スタッフとコミュニケーションが取れることで店舗の接客をEC上で再現するパターンも考えられます。
店頭で接客を受けた人がECで購入したり、EC上で商品を知った人が店舗を訪問し目的買いをしたりといった循環が見込めます。
店舗スタッフの活動をリアルだけに縛らず、お客様が店舗スタッフのSNSなどをきっかけに購買した場合は評価する仕組みづくりなども必要になってきます。店舗スタッフをデジタルでも活用できるようにすることが、これからのECに求められる形なのではないかと考えられます。
これからのECを実現するためには二つのポイントがあります。
1、場を用意すること
自社商品をアピールする場、ECやSNSなど被リアル系接点を活用し、デジタル世界で顧客を店舗、ブランドのファンにする
2、有力なユーザーへのリーチ
店舗スタッフとユーザー(顧客)が適切に出会えるようなマッチングの仕組みを作り、インフルエンサーとフォロワーのような関係を作り出す
このポイントを押さえたECのカタチとして「ヘッドレスコマース」が最適であろうと当社は考えます。
多彩な顧客とのコミュニケーションの場を作り、「欲しい」と思ったときに買うことができるECの新しい仕組みであるヘッドレスコマースは、ECのシステムと一体化していたUI(フロント部分)を切り離し、リアルも含めた多様なチャネルと接続できることが特色です。
店舗スタッフのコーディネートコンテンツに直接買えるようにカートボタンを設置したり、商品紹介の動画があるページからそのまま購入できるような設計をしたりと、様々な施策が実施できます。
自社ECは一つではなく、ECのポップアップショップのような形で複数あった方が多様化した購買層にリーチしやすくなります。いろいろな場所で、お客様の望むタイミングでいつでも買える、そのようなECがこれから求められるのではないかと考えています。