アフターコロナ EC進化論〜多面性を持つべき自社EC~
——自社ECは今後どのような考え方で構築・運用を行えばよいのか。株式会社エスキュービズムソリューションデザイン部 部長の岩井源太が2020年に起こった消費者の購買行動の変化と、それに伴うECサイトでの購買体験の設計について解説しました。
コロナ禍で起こったオンラインの変化
コロナ禍以前から予想していたオンライン化が加速、むしろジャンプしているような状況となっています。またコロナが発生する以前に来るであろうと予測していた未来はもうこないと考えてよいでしょう。ゆるやかな速度での変化を見込んでいた企業のデジタルシフトでは、追いついていくのが難しいほどのスピードで変革が進んでいるのです。
2020年8月の段階で、ECでの消費購入者の割合が56.9%増という調査結果が発表されています。各年齢層でECを利用する人が増え、最も伸び率の大きかった40代では22ポイント増となっていました。
さらに、オンラインでの購買経験の増加は一過性のものではなく、多くの消費者が定着化していることが総務省統計局の調査結果に現れています。
※出典:2020年9月度家計消費状況調査(総務省統計局) https://www.stat.go.jp/data/joukyou/index.html
このように、これまでECでの購買を避けていた層が流入し、非対面での購入を一般ユーザーが利用する状況になってきているのです。ここで重要なポイントとなってくるのが、顧客のデジタルリテラシーが細分化してきた点です。
コロナ禍以前ではある一定のデジタルリテラシーの最低ボーダーがありましたが、2020年以降はこのボーダーが徐々になくなってきているため、EC側でも顧客の多様化に合わせた変化を求められるようになっています。
アフターコロナに考えるべき自社ECのあり方
行動起点がオフラインからオンラインへ移行し、多様になった顧客層に合わせた新たなアプローチが必要となります。特に、アフターコロナでは消費者の変化にいち早く合わせなくてはなりません。 そのためには、今まで以上に消費者に合わせたECの設計が必要になってきます。消費者心理をきちんと捉え、顧客接点を創出してそのタッチポイントから自社ECに流入してもらうよう考えねばならないのです。
ECサイト構築の際によく話題になるのが、大手ECサイト(楽天やAmazonなど)の縮小再生産をしようとするパターンです。しかし、この二つは購買層が異なるため、大手ECサイトの運用と同じ考え方ではうまくいきません。
大手ECサイトからの購買層は大量の情報群のなかから価格やレビューといった情報を元にアクセスしてきます。そのため、自社認知度の低いライト層へのタッチポイントとして活用していくことが有効になります。 対して自社ECの購買層は知りたい情報や欲しい商品が決まってアクセスして来る方が多いでしょう。情報感度の高い層へきちんと商品訴求をし、よりファン化を深めていくような運用を行っていくことが自社ECの運用として適しているといえます。
このように、購買層の差をきちんと把握して客層に合わせた役割分担を行い、運営をしていくことが重要です。
自社ECどうすべき?消費者の「欲しい心理」の理解
自社ECの運用において、まず把握するポイントは消費者心理です。消費者が物を買おうとするときには、大きく4つの「欲しい」心理が働きます。
A:魅力的だから欲しい(企業、商品のブランド力)
B:必要だから欲しい(必要力)
C:便利だから欲しい(商品力)
D:費用対効果があるから欲しい(価格力)
上記のA、B、Cを吟味した上で、Dの費用対効果を考慮し比較検討のすえに購買行動につながります。特に大手ECサイトでは費用対効果、価格面を比較させる手法を取っています。
多様化した消費者の価値観
もう一つのポイントは「消費者の価値観の変化」です。 ネットの普及により流入経路が複雑化した結果、以前のようにマスメディアを使って企業が流行をコントロールすることは難しくなりました。
消費者の価値観が多様化し、趣味趣向が細分化された「個の時代」において、自社ECに数万人、数十万人を一気に集客することは非常に困難です。もっとニッチな施策でより小規模なグループにアプローチする必要が出てきています。
自社の特徴、取り扱い商品を踏まえて、「欲しい心理」と「多様な価値観」に合わせたECサイト設計をすべきです。
消費者に合わせたECの作り方
消費者に合わせるための具体的な手法として、「複数のECサイトで消費者の多様な価値観を提供する」ことをおすすめします。 一つのECサイトだけで多様な価値観に合わせることが難しくても、複数のサイトであればニッチな施策を多数実施することが可能になってきます。
ECの新しい考え方「ヘッドレスコマース」
複数のサイトを作るための新しい考え方がヘッドレスコマースです。ヘッドレスコマースとはECシステムとUIを切り離してタッチポイントとAPIで連携させるため、ECシステムを起点として顧客接点を増やすことができます。
LPとして作成した商品サイトをそのままマイクロなECサービスに
イネージからEC購入できる場を作る
VRショップでの購買
ショップスタッフのコンテンツからすぐに買える
といった、「商品を知り、欲しいと思い、購入する」までをシームレスに繋げた場を複数つくることで顧客の「欲しい」と「多様化した価値観」に合わせた購買体験を提供できます。 自社ECでは、離脱させずにすぐ購入できるECシステムをヘッドレスコマースの考え方で構築することが重要です。