
アジアクエストとエスキュービズムは2021年1月23日、「EC戦国時代に勝ち残る自社ECの考え方」と題したオンラインセミナーを開催しました。アフターコロナに向け今後ECをどう考え、 どのようなECを目指すべきか?今後勝ち残るため大手EC/他社競合と自社ECの差別化についてなど、消費者の要望に応える次の時代に目指すべきECの考え方を、国内外で取り組まれている新たなECの取り組みを紹介しながら解説しました。
アジアクエストとエスキュービズムは2021年1月23日、「EC戦国時代に勝ち残る自社ECの考え方」と題したオンラインセミナーを開催しました。アフターコロナに向け今後ECをどう考え、 どのようなECを目指すべきか?今後勝ち残るため大手EC/他社競合と自社ECの差別化についてなど、消費者の要望に応える次の時代に目指すべきECの考え方を、国内外で取り組まれている新たなECの取り組みを紹介しながら解説しました。
コロナ禍以前から予想していたオンライン化が加速、むしろジャンプしているような状況となっています。またコロナが発生する以前に来るであろうと予測していた未来はもうこないと考えてよいでしょう。ゆるやかな速度での変化を見込んでいた企業のデジタルシフトでは、追いついていくのが難しいほどのスピードで変革が進んでいるのです。
2020年8月の段階で、ECでの消費購入者の割合が56.9%増という調査結果が発表されています。各年齢層でECを利用する人が増え、最も伸び率の大きかった40代では22ポイント増となっていました。
さらに、オンラインでの購買経験の増加は一過性のものではなく、多くの消費者が定着化していることが総務省統計局の調査結果に現れています。
このように、これまでECでの購買を避けていた層が流入し、非対面での購入を一般ユーザーが利用する状況になってきているのです。ここで重要なポイントとなってくるのが、顧客のデジタルリテラシーが細分化してきた点です。
コロナ禍以前ではある一定のデジタルリテラシーの最低ボーダーがありましたが、2020年以降はこのボーダーが徐々になくなってきているため、EC側でも顧客の多様化に合わせた変化を求められるようになっています。
行動起点がオフラインからオンラインへ移行し、多様になった顧客層に合わせた新たなアプローチが必要となります。特に、アフターコロナでは消費者の変化にいち早く合わせなくてはなりません。
そのためには、今まで以上に消費者に合わせたECの設計が必要になってきます。消費者心理をきちんと捉え、顧客接点を創出してそのタッチポイントから自社ECに流入してもらうよう考えねばならないのです。
ECサイト構築の際によく話題になるのが、大手ECサイト(楽天やAmazonなど)の縮小再生産をしようとするパターンです。しかし、この二つは購買層が異なるため、大手ECサイトの運用と同じ考え方ではうまくいきません。
大手ECサイトからの購買層は大量の情報群のなかから価格やレビューといった情報を元にアクセスしてきます。そのため、自社認知度の低いライト層へのタッチポイントとして活用していくことが有効になります。
対して自社ECの購買層は知りたい情報や欲しい商品が決まってアクセスして来る方が多いでしょう。情報感度の高い層へきちんと商品訴求をし、よりファン化を深めていくような運用を行っていくことが自社ECの運用として適しているといえます。
このように、購買層の差をきちんと把握して客層に合わせた役割分担を行い、運営をしていくことが重要です。
自社ECの運用において、まず把握するポイントは消費者心理です。消費者が物を買おうとするときには、大きく4つの「欲しい」心理が働きます。
上記のA、B、Cを吟味した上で、Dの費用対効果を考慮し比較検討のすえに購買行動につながります。特に大手ECサイトでは費用対効果、価格面を比較させる手法を取っています。
もう一つのポイントは「消費者の価値観の変化」です。
ネットの普及により流入経路が複雑化した結果、以前のようにマスメディアを使って企業が流行をコントロールすることは難しくなりました。
消費者の価値観が多様化し、趣味趣向が細分化された「個の時代」において、自社ECに数万人、数十万人を一気に集客することは非常に困難です。もっとニッチな施策でより小規模なグループにアプローチする必要が出てきています。
自社の特徴、取り扱い商品を踏まえて、「欲しい心理」と「多様な価値観」に合わせたECサイト設計をすべきです。
消費者に合わせるための具体的な手法として、「複数のECサイトで消費者の多様な価値観を提供する」ことをおすすめします。
一つのECサイトだけで多様な価値観に合わせることが難しくても、複数のサイトであればニッチな施策を多数実施することが可能になってきます。
複数のサイトを作るための新しい考え方がヘッドレスコマースです。ヘッドレスコマースとはECシステムとUIを切り離してタッチポイントとAPIで連携させるため、ECシステムを起点として顧客接点を増やすことができます。
といった、「商品を知り、欲しいと思い、購入する」までをシームレスに繋げた場を複数つくることで顧客の「欲しい」と「多様化した価値観」に合わせた購買体験を提供できます。
自社ECでは、離脱させずにすぐ購入できるECシステムをヘッドレスコマースの考え方で構築することが重要です。
自社ECを作る前に、まずは大手ECモールに出店してみるケースも多くあります。大手ECモールに出店すれば、自前で環境構築や集客を賄わなくてもよいため安価で効率的に販売ができるというメリットがあるからです。圧倒的なデジタル集客率、検索エンジンと広告の投下、そして大手ECモール同士が競争しサービス価値を高めることにより、EC市場は大きく発展してきました。
ECモールとは、デジタル時代のデパートといえます。店子(テナント)としてECモールに出店する企業が増えた結果、「そこに行けば何でもそろう」と言われた実店舗のデパートがECモールに駆逐されていくこととなりました。
日米のEC化率を比較してみると、2019年までは米国は20%、日本は6%程度でした。2020年のコロナ以降、両国とも上昇傾向にあり、日本でも10人にひとりはECを利用している割合となってきています。
アメリカではAmazonなどのECモールが強くなりすぎたために、Amazonで買えるものはありふれて陳腐なもの、といった空気がミレニアル世代(25歳~34歳のデジタルパイオニアと言われる世代)に流れており、カウンタームーブメントとして「自分にぴったりな唯一無二のもの」というパーソナルなニーズに応えるD2C(Direct to Consumer)が後押しされています。このムーブメントは数年以内にいずれ日本にも訪れると予測されます。
D2Cは単に消費者へ直販を行うという意味だけでなく、AmazonなどECモールでは販売しない、リアル流通にも乗らない、無駄な中抜きや大量生産を行わず品質に還元する、といったD2Cならではの価値を提供しています。そうした背景をストーリーとして持っているのが成功しているD2Cです。
さらにD2Cの隆盛を後押ししている点として、Amazon like serviceとデジタルトランジションの2つのポイントがあります。
2015年頃からアメリカではD2Cサービスが広がり始め、現在では成功したD2C企業はユニコーンとして株式市場に上場するといった状況になってきています。
自社サイトで販売するにあたり、集客効率でECモールに勝てるかどうかは現実的な課題です。広告でもSEOでもECモールや比較メディアに勝つのは難しいでしょう。
脱モール後に道筋を作るとすれば、商品名や分類名以外のストーリーで検索・認知してもらう、商品にストーリーを持たせられるのかが重要になってきます。
商品のコンセプトやプロモーションは購買前のストーリーとして消費者に伝えることで販売促進が可能となります。また購買後にはその商品によって課題解決がなされたというストーリーが生まれ、レビューやSNSなどで共有され購買前のストーリーを補強するという流れがあるはずです。
しかし大部分のECサイトでは、物を売ることに終始し、販売する商品の価格や機能、スペックを表示させておいて検索し購入してもらうだけにとどまっています。
では実際にストーリーを提供している企業、サービスの事例を紹介します。
事例1 Snaq.me
月1~2回、自分の好みに合わせたお菓子が届くサブスクリプションサービス。消費者はお菓子そのものではなく「おかし習慣」という体験を消費する。
事例2 casper
アメリカのマットレス事情を背景に、課題解決型のマットレス商品を開発、マットレス調達の労力をゼロにするという価値を提供。消費者はBIB体験(Bed In Box)を消費する。
この紹介事例2社の共通点としては、以下が挙げられます。
自社ECでストーリーのある購買体験を作る際には、販売する商品の機能や価格ではなく提供価値プロセスを設計しましょう。消費による課題解決、購買体験全体のストーリーを組み立てることで可能になります。
また、組み立てたストーリーを魅力的に表現する構造を作り、リファインをかけ続けましょう。そのためには前段で岩井氏が解説したヘッドレスコマースが重要な考え方になってきます。
消費者(エンドユーザー)の接触するUI部分をヘッドといい、従来のECではヘッド部分に大きな制約がありました。この制約をAPI連携で自由にすることにより、様々なニーズに合わせて多彩な表現ができるようになる、というのがヘッドレスコマースの考え方なのです。