DXツールで旧態依然の業務過多状態からアップデート

業界を問わず、日本社会全体が慢性的な人手不足に悩まされている今、企業は人的リソースや時間外労働に頼らず、今よりも少ない人数でスムーズに回せる新しいシステムの構築を求められています。

少子高齢化が加速度的に進むこれからの日本では、労働力を維持しようとしても達成は難しいでしょう。労働の量ではなく質を見ていくのがこれからの企業成長のためには必要と言えます。

こうした新しいシステムの実現に欠かせないのが、DXツールの導入と活用です。

本稿では、業務過多の状態が発生しやすい要因が複合的であることを確認しつつ、業界別にDXツールの導入トレンドを紹介しています。来るべき未来に向けて、企業が進みやすい方向はどこなのかを示していきたいと思います。

業務過多状態を解決するためのDX

業務過多状態は、従業員に多大な負担をかけるだけでなく、離職率の増加や人員補充の遅滞を引き起こします。

ヒューマンエラーが発生しやすくなり、目の前の業務に追われ続けることで中期的な視点を持てなくなるというリスクもあります。

業務過多は複合的な要因で起こる

業務過多という状態は、企業(行政・省庁)の人手不足、前時代的な評価制度、給与の問題という要素が互いに関連しあうことで起こりやすくなります。まず人手不足に関しては、少子高齢化によって社会全体が共通に悩んでいる課題と言えるでしょう。

少し古いデータですが、厚生労働省が発表した「少子高齢化と労働力供給構造」によれば、日本の労働力は、1998年の6,793万人をピークとして、一時は増加に転じたものの、概ねゆるやかな減少傾向が続いています。2020年の労働人口は6,404万人で、ピーク時よりも約400万人減少しています。
今後も労働人口は減り続けることが予測され、長期的な見通しでは、40年後の労働人口は現在よりも4割減少しているとも言われています。

しかし、日本はレガシーシステムが多く稼働している国と言われ、仕事のシステムは労働者が多かった頃とさほど変わっていないものもあります。以前と同じ業務量を少ない人員で行なっているので、業務が滞り過多状態となるわけです。

これに加えて、「残業をしている方が偉い」、「長時間仕事をしている人が優秀」という前時代的な評価制度と、給与水準の低さも、業務過多を引き起こす要因になっています。

本来であれば、同じ量の仕事をより短い時間で完了できる従業員の方がスキルは高いはずですが、社会においては長時間オフィスにいる方が職務に従事しているように評価されやすく、さらに残業代が出て給与も高くなります。
業務を効率化すると残業ができず給与が増えなくなるので、残業ありきで仕事をするスタイルが浸透しているのです。

人手不足や仕事へ取り組む姿勢は、そのいずれもが複合的に組み合わされることで業務過多を引き起こしています。

業務過多の状態とは、すなわち相互的な作用で起こる悪循環と言い換えることもできるでしょう。評価制度を刷新する、残業を削減する、といったように一つの課題にのみ対処するだけでは、業務過多を根本から解決するのは難しいかもしれません。

業務の流れをスムーズにして、働きやすさを整えるには、これらの要素すべてに作用するDX化などの解決策が必要になります。

参考:厚生労働省「少子高齢化と労働力供給構造PDF」

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/11/dl/01-1-3.pdf

行政でも業務過多は課題

業務過多状態に陥っているのは、民間企業ばかりではありません。

2021年には、国会に提出する法案に初歩的な誤字脱字が多く発生、ずさんな文書が使われていたことが指摘され、ニュースとなりました。

この原因には、コロナ禍で業務が多いのにも関わらず、テレワークの体制整備が充分に行われないまま仕事をしていたこと、仕事の量に対して人員が足りていないことなどが指摘されていました。

さらに、2023年は有名国立大学から官僚を目指す学生が大幅に減っていることも取り沙汰されました。

一昔前は官僚はいわゆるエリートの出世街道と見なされていましたが、現在の就活生は、業務過多や長時間労働が当たり前、かつ下積みの期間が長いとされる省庁勤務を忌避する傾向があります。

業務過多を解決するDXツールは業界ごとに様々

業務過多を解決するDXツールは、業界ごとに適するものが異なります。

どの業界も、慢性的な人材不足や残業の常態化に悩んではいますが、解決に導く最適なツールを選ぶことで大幅な業務効率の改善が見込まれるはずです。

介護も脱アナログでケアの質を高める

介護業界は、他の業界と比べるとDX化があまり進んでいない世界とされてきました。しかし次第に、スケジュール管理クラウドシステムや、看護記録のデジタル化、AIによるシフトの自動化ソフトといったDXツールが導入され始めています。

介護の仕事では、働く人の8割が人手不足を感じながら勤務をしていると言われていて、ある調査では、「スケジュール管理を手書きする」、「記録業務(転記する書類などが多い、共有しにくい」という点で、業務に無駄な時間が生じていると考える人が多いことも分かっています。

これらの「無駄な時間」は、紙で管理する書類が多かったり、記録がスムーズに共有されなかったりすることで起こっているケースもあり、DXツールで改善されたことも数多くあります。

例えば、クラウドで看護記録を管理してタブレット端末で確認するようにしたことで、利用者の状況が共有しやすくなったという事例があります。紙で記録を管理していると、状況把握にタイムラグが生じてしまいますが、オンラインで共有すれば職員が必要な時にすぐ最新の状況を把握することが可能です。
タブレットを職場に導入したことで、どこにいてもオンラインでミーティングできるようになった(移動のタイムロスを減らせた)という事例もあります。

業務を効率化したことで「時間に追われず丁寧に利用者のケアができる」、「本来の仕事である介護業務に注力できる」と働き手の充足感が高まるのも、大きな導入効果と言えるでしょう。

物流は2024年問題間近でデジタル化がますます加速

物流業界では、これまで除外されていた時間外労働の上限規制が適用される、いわゆる2024年問題もあり、今まで以上に人材流出や業務過多に陥ることが懸念されています。

特に、コロナ禍以降は全世代にオンラインショッピングが浸透して出荷量は激増、これまでのようなサービスが事実上提供不可となる「物流クライシス」も囁かれています。

これを解消するDXツールとして成功しているのが、受注から出荷までの情報を一元管理する、管理システムのデジタル化です。

物流現場は、運送会社によってそれぞれ異なる送り状が必要だったり、着荷対応のフローが煩雑であったりと、ヒューマンエラーが起こりやすいシーンが多くあります。この複雑な情報のやり取りをデジタル化で一元管理することによって、ミスを減らし、属人的な仕事のあり方からの脱却をはかることができます。

一元管理システムは様々な可能性が実現できるツールのため、導入する際はまず業務フローを洗い出し、無駄な部分の可視化を行う必要があります。

フローを洗い出すことで、例えば、出荷業務の効率化に特化している帳票ソリューションのみでデジタル化が完成するか、別名をデジタルレイバーとも呼ばれるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を組み合わせて導入する方が良いのか、自社に合ったシステムの形を検討することができるためです。

RPAは、Officeアプリを含めたPC上の業務を人間のように行なってくれる技術です。極端な人手不足が悩みという企業は、思い切ってRPAを含めた包括的なデジタル化を検討するのも有効な解決策と言えるかもしれません。

電子カルテ普及率50%の医療、従事者の負担減が急務

世界でも先進的な水準とされる日本の医療ですが、DX化についてはまだ進んでいないのが現状です。政府は15年ほど前から電子カルテの導入を推奨していますが、アナログで運営しているクリニックもまだ多く、電子カルテの普及は約50%と言われています。

会計業務も手作業で行われるフローが多く、医療従事者が抱える雑務の量は相当に多いとされています。医療現場で業務過多になると、利用者である患者にも負担や不満が出やすくなります。
これをDX化で解決するには、予約の段階からデジタル化を進める必要があります。

デジタル化の例には、ホームページを使って予約から問診・カルテ作成までを行い、検査やオンライン診療、対面診療につなげるシステムがあります。
このシステムでは、カルテや検査、診療の結果がデジタル管理されるため、自動で精算や次回の予約が可能になります。

予約から精算までデータ連携を行うことにより、診察や会計にかかる待ち時間を大幅に短縮できる可能性が高まります。

ブライダルは対面・FAXのやり取りをオンラインに集約する傾向

ブライダル業界は、FAXによる受発注のやり取り、顧客(新郎新婦)との複数回にわたる対面での打ち合わせなど、効率化が進みにくい業界とされてきました。

さらに、ウェディングプランナーは、長時間勤務や激務を前提とした働き方が現代のワークスタイルにそぐわないとされ、離職率が高いのが業界全体の悩みとなっています。

しかし近年では、LINEやアプリを使って顧客とやり取りをしたり、情報管理をスムーズにする業務支援ツールを活用する企業も増えています。

例えば、ウェディングプランナーと顧客、衣装やフラワーアレンジメントといった提携先が情報を共有できるDXツールは、スケジュールや必要な書類をクラウドにアップロードするだけで、関わる全員がチェックできるという機能を備えたものもあります。

新郎新婦の多くがデジタルネイティブ世代となってきており、顧客にとっても利用のハードルは低く、「何度も打ち合わせに赴かなくてもクオリティの高い挙式ができる」という現代に合わせた価値提供ができる点も魅力になっています。

さらに、アナログから本格的に脱却するためのブライダルに特化した基幹システムも登場しています。一回の婚礼ごとに発生する大量の見積・請求書作成業務と、挙式当日までの発注・スケジュール管理を一括することで、顧客管理のすべてが可視化され、業務の大幅な時短化が見込めるようになっています。

ブライダル業界のように、これまで思うようにデジタル化が進んでいなかった業界は、新しいDXツールを導入するだけで一気に効率化が達成できる可能性があります。

■関連:ブライダルDXソリューション事業

不動産は宅建法改正でデジタル化も進む

不動産も、長時間勤務や残業ありきの働き方が常態化していて、業務効率の改善が強く求められている業界の一つです。

DX化が進まない要因には、長らく重要事項説明書や契約書のデータ化が法的に認められていなかったこと、貸主・借主・売主にはそれぞれ多様な要件や事情があり、対応を一律のマニュアル化しにくいといったことなどが挙げられていました。

しかし、2022年の宅地建物取引業法改正によって、オンライン契約が解禁となり、契約書のデジタル化が可能になりました。
これに伴って、業務の効率化をはかろうという動きが加速しています。

例えば、用地評価や取得、販売までの流れを一見管理する不動産に特化したDXシステムや、物件情報をスムーズに共有するシステムなどが挙げられます。

また、遠隔でのオンライン物件案内やVR内見といった新しい住まい探しのニーズに応えるため、高品質な動画、VRコンテンツを制作・編集・管理できるシステムも導入が始まっています。

DXで人手不足と長時間労働によって起こる業務過多を改善する

今回取り上げた業界以外にも、業務過多が問題となっている業界は多数存在します。

大学職員や保育士など教育関連の仕事でも人員に対して業務量が超過している状態が続き、精神疾患の教員が増えているというニュースも1月に報道されたばかりです。

愛媛県のある企業は、週休3日制を導入して話題となりましたが、これからさらに少子化が進めば確実に働き手は減少し続け、企業の努力や工夫だけでは対応しきれなくなる時代は確実に到来してしまいます。

そしてその重要な鍵の一つとなるのがDXツールなのです。事実、業務過多をツールなしに解決しようとすると、さらなる長時間労働を助長しかねないという意見もあります。

日本の人口が少なくなる以上、これまでとまったく同じ働き方やライフスタイルを貫き通すのは無理があると言わざるを得ないでしょう。
時代の進化に従って仕事のあり方もアップデートさせることが、企業戦略として求められていくはずです。