通販市場におけるECチャネルの変化と課題

インターネットの普及やコロナ禍により、通販市場ではECチャネルが成長し続けています。多くの小売店がECの導入を進めていますが、そこには課題もあり、これからも改革を続けなければなりません。

この記事では通販市場におけるECチャネルの変化、EC改革の課題について解説します。

通販業界の拡大がEC市場をさらに成長させる

インターネットやスマートフォン、PCの普及によりEC市場は年々拡大しています。

通販市場の中でもオンライン上で商取引を行うEC市場がほぼメインとなっており、“通販”という言葉に包括されるカタログやテレビショッピングは、ターゲットを絞ったごく一部の方法となりました。

まずはECチャネルが通販市場でどれだけ拡大しているのか、また通販チャネルの変化についてみていきましょう。

ECチャネルが通販市場の大半を占める

富士経済がまとめた資料によると、2023年の通販市場は15.6兆円で、EC市場は13.8兆円に拡大する見込みです。(※)

※ 2023年の通販市場は15.6兆円、EC市場は13.8兆円に拡大する見込み

https://netshop.impress.co.jp/node/10970

数字で見てもわかる通り、通販業界ではECが市場をけん引しています。2000年になりパソコンが普及したこと、そして2010年にスマホが普及したことでインターネットが生活に不可欠な存在になりました。

そして大きなきっかけとなったのがコロナ禍による自粛要請で、消費者の生活様式は大きな変化を迎えることとなりました。消費者にとってECは欠かせないものとなり、奇しくもECが大きく成長する結果になったのです。

2022年の受注形態で見ると、スマートフォンが6兆9822億で同年10.3%増、PCが6兆2861兆円で0.1%増と半々でした。

昨今の消費者はPCもスマートフォンも1人1台所持しているケースが多く、外出先や通勤時間の間にスマートフォンで買い物をしたり、自宅ではPCで買い物をしたりと柔軟に使い分けているケースが増えています。

今後も通販市場のほとんどをECが占める見込みで、小売店はECに注力することが急務です。

通販チャネルの発展

インターネットが発達する以前は、「通販」といえば新聞や電話による受注がメインでした。1900年代に通販という概念が生まれ、当初は新聞社が通販代理部を自社内で設置し、新聞という自社媒体を使った「代理販売」が活発化しました。

その後雑誌やカタログ、郵便といった受注が増えていき、百貨店が電話による受注を始めたことがきっかけとなり、「頒布会」という通販による定期購入という形態が増えていきます。

1995年の7月にはAmazon.comが米国でオープンし、同年11月にはWndows95が発売され、このころから急速にインターネットが普及しました。この辺りから、ネット通販(EC)時代に突入したのです。

そして2020年代に突入した今、通販ではECがメインとなりました。ECの中でもオークションやオムニチャネル、フリマサイトなど販売方法が多様化し、顧客のニーズに合わせて進化を続けています。

若い年代向けのマーケティングでは、新聞やDM、ラジオやTVCMといったチャネルに費用をかける企業は減り、主戦場はもっぱら動画サイトやSNS、ブラウザなどのWeb広告やSNSの公式アカウント、自社サイト、リテールメディアなどデジタル分野が増えています。

インターネットや市場の発展により、通販チャネルも発展し続けています。

1900年代はインターネットの利用率が0.1%とほぼ0に近く、当時の通販チャネルはカタログやテレビがメインでした。それが2016年ごろになるとインターネットが大幅に普及しており、最も利用している通販チャネルはインターネット(EC)で、97.9%とそのほとんどでECが占めている結果となっています。

インターネットは24時間365日注文を受けることができ、購入場所を選びません。さまざまな生活スタイルの顧客に柔軟に対応でき、スマホやPCから気軽に注文できる点も魅力です。

小売店側としては、店舗がなくてもECのみで売上を作れるため、顧客と店舗の距離も関係ありません。もちろん物流コストは無視できませんが、ECの発達によって実店舗との相乗効果を狙ったり、実店舗なしで運営したりと多様化を見せています。

事業者側にとってECが優れている点は、サイトに訪問したユーザーの人数やアクセス数、Web上の行動データや顧客データといった情報を分析できることです。顧客の動線やニーズ、人気商品といった状況をデータで把握することができ、より深くマーケティングできるようになりました。

カタログ販売は今も重要なチャネル

インターネットが普及するまでに支持されていた通販チャネルといえば「カタログ」です。

目的以外の商品も目に入るカタログは、客単価の向上につながります。2020年代となった今でも、インターネットに不慣れなシニア層を中心にカタログ注文は人気です。

ECの発達によって紙媒体のカタログは縮小傾向にありますが、ニッセンや千趣会といった大手ブランドではまだまだ支持されています。カタログとECを併用するユーザーも多く、並行運営による相乗効果も狙えます。

世界的にみても通信産業は拡大し続けており、アメリカ、中国では日本より高いEC普及率があります。日本ではコロナ禍による規制が緩和された後もECが発達するとみられており、現在の課題と向き合いながら、より顧客に喜ばれるECシステムの構築が必要です。

通販業界のECに関する課題

拡大し続ける通販業界ですが、ECでは以下の課題があります。

  • ・顧客セグメントの変容
  • ・通販とECで別々のシステムを利用している
  • ・コールセンターの接客品質の低下

それぞれについて、順番に解説していきます。

高齢化、少子化…顧客セグメントが変容

日本では少子高齢化の流れが止まらず、消費行動にも大きな変化が起きています。小売店側は顧客セグメントの変容を追いかけ、自社のメインターゲットとなる年齢層の購買力を意識しなければなりません。

例えばどの世代でも利用するスーパーマーケットでは、最も買い物をするのは子育て世帯ではなく60代のシニア層です。 また、60代と20代では、生活パターンの違いから買い物の特徴も異なるため、 ターゲットごとの品ぞろえや購買チャネルを用意する必要があります。

20代は家事の効率化のために半調理品や冷凍食品、成型済の食品などを買っていますが、60代は野菜はもちろん魚さえもまるごと購入し家でさばく時間があるため、未処理の丸魚を購入する比率は60代がダントツで多いのです。(※)

参考:店舗のミライを考えるメディア「食品スーパー、なぜ主要顧客が高齢化?次世代の顧客獲得に課題

少子高齢化によりどの業界でも高齢者の消費割合は増えています。世帯主が65歳以上の世帯の支出額は他の世代と比較しても伸びており、1990年代には約12%だったのに対し、2000年には20.3%となっています。(※)

※ 参議院資料 少子高齢社会における消費の現状と課題P.1

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h17pdf/20050701.pdf

小売業界は、上記のような少子高齢化に対応したターゲット設定を行わなければなりません。スーパーマーケットであればネットスーパーへの出店や配送サービスの導入、移動スーパーシステムの活用など、新たな販売チャネルを取り入れることも重要になってきます。

通販とECで別々のシステムを利用

ECにおける技術面での課題といえば、複数のチャネルをまたがったシステムの統合が挙げられます。

2020年に起こったEC特需より前からECを運営した企業では、通販とECで別々にシステムが構築されていることが多く、今後の運用に悩むケースが少なくありません。

前述したとおり日本では少子高齢化が進み、競合間における消費者の取り合いが必至です。競争率を高めるためにも顧客接点を増やすことが重要で、その1つとして「オムニチャネル化」を検討する企業が増えています。

このオムニチャネル化は複数のチャネルを統合運用することが重要で、売価の統一や在庫管理システム、顧客データの統合が必要です。

コールセンターの接客品質の重要性

ECを展開する企業では、コールセンターやカスタマーサポートとして電話部門を設置するケースが多いものです。しかしこのコールセンターの接客品質が原因で、顧客からの評価が低下してしまう場合もあります。

コールセンター業務は離職率の高さから、慢性的な人手不足になりがちです。業務効率や生産性の観点からAIやチャットボットの導入も進んでいますが、生身の人間ではなく機械に対応されることに戸惑う消費者もいます。

50歳以上の消費者をメインターゲットとする某通販サイトでは、あえてAIではなく生身の人間が直接電話対応するコンシェルジュサービスを始めました。

AIやチャットボットをあえて採用せず生身の人間が電話対応することで、購入時の不安や疑問を解決し、顧客満足度を高めています。2023年5月より始めたこのサービスは予想を大きく上回る利用希望者に対応するため、8月には運営規模を拡大しました。

この取り組みにより、AIコールセンターの対応によって「知りたい内容にたどり着けない」「希望が伝わっているか心配」という不安を軽減できるのです。消費者からの評判も上々で、顧客満足度に貢献しています。

上記のように、顧客セグメントの変容やシステムの統合、コールセンターの品質向上などがEC運営における課題となります。

「通販」の考え方を拡張する必要性

EC化が進んでいる昨今では、「通販」という考えそのものを拡張する必要性があります。最後に、EC時代にどう進化すべきかについて、そのポイントをご紹介します。

通販とECのシステムを統合

在庫管理やCRM、物流やERPといったそれぞれのシステムを統合することで、より高度な独自システムへと成長していくことができます。

一貫性のあるシステムとなれば各関係者のデータ共有も容易になり、より顧客体験(CX)を高められでしょう。

昨今ではDXとしてITによる企業価値の向上が求められていますが、小売業界ではいかにビジネスプロセスを効率化させ、顧客体験の向上やあらたなビジネスモデルの創出をできるかがポイントです。

ヘッドレスコマースなど変化に対応できるシステムに

ECの進化に柔軟に対応する1つの方法として、「ヘッドレスコマース」があります。ECサイトのフロントエンドとバックエンドを切り分けるヘッドレスコマースは、開発の柔軟化や効率化を実現できます。

ECでは、ブラウザ経由やモバイルアプリ経由などECチャネルが多様化していることから、各チャネルにおける顧客体験の最適化が必要です。

ヘッドレスコマースならフロントエンドの微細な調整にすぐ対応でき、ECシステムに依存しません。幅広いチャネルを展開してユーザーとの接点を増やしたり、顧客に合わせて複数のサイトを構築したり、といったことも可能です。

システムを統合して在庫や顧客情報の管理を一元化することはもちろんですが、そこには「拡張性」もポイントとなります。変化することを前提に柔軟性のあるシステムを構築できれば、よりECビジネスが加速するでしょう。

通販とECの統合運用でビジネスの拡大を。EC-ORANGE 電話受注対応システム