拡大するBtoB ECとDX化、変わる社会の中で

BtoB ECは、ビジネスのデジタル化によって着実にニーズを伸ばしてきました。

2023年に施行される予定のインボイス制度、2024年に予定されているISDN回線のIP網化とそれに伴うEDI(電子データ交換)の廃止によって、新たにBtoB ECサイトの検討を始める企業も増えてきています。

電子商取引は、BtoC、BtoB共に市場を大きく広げてきましたが、現在のBtoB ECはさらにその利便性を高めることが求められています。

例えば、資材購入のみに特化したBtoB ECサイト、バックヤードや福利厚生といった目的に特化したBtoB ECサイトといった事例が成功をおさめています。

見積もりと稟議申請、顧客企業管理といった通常のビジネス慣習をそのままECサイトに持ち込んだシステムだけでなく、多くの社員と支店を抱える大企業向けに、経費内でスムーズに購入できるような包括的な社内通販システムを整備する等、これまでの「当たり前」を刷新するようなスタイルが、コストやマンパワーを削減するという例もあります。

本稿では、BtoB ECの規模を確認すると共に、ビジネスにおいて当たり前になりつつあるECサイトの今後についてを紐解いていきます。

BtoB ECは拡大市場

企業間電子取引を指すBtoB ECの市場規模は、拡大傾向にあります。

経済産業省が公表した資料によれば、令和3年度のBtoC(消費者向け電子商取引)市場規模は20.7兆円でしたが、BtoBの市場規模は372.7兆円に達しています。

デジタル商取引といえば、多忙な現代人のニーズに合わせた消費者向けの取引方法という認識が先に立つかもしれませんが、実際には国内のデジタル商取引の多くはBtoBで行われていることになります。

全商取引の中で電子商取引が占める割合を示すEC化率についても、BtoBは前年比2.1ポイント増の35.6%となっています。

この背景には、社会全体でITインフラの整備が進んだことだけでなく、デジタル化を推進する企業が増えていること、そして、EDI廃止やインボイス制度導入といった変化を控えていることがあります。

企業間取引のデジタル化が進む

BtoBの市場規模拡大には、企業のDX化も関係しています。

アナログの取引と比較すると、デジタルによる商品の受発注はスピーディで、社内での検討から契約成立に至るまでの流れもスムーズに進みやすい傾向にあります。

商談が、カタログや契約書といった紙ベースではなく、デジタルデバイス(スマートフォン、タブレット)によるデジタルベースになることで、BtoBは展開しやすくなり、商品の購入検討から社内の承認、実際の受発注といった一連のフローが迅速に行われやすい状態になっています。

FAXや電話で注文していた時代と比較すると、受発注のスピードは格段にアップしたと言えるでしょう。

受注企業はデジタル化によって、マーケティングの手法や新規顧客の獲得手段が増えました。展示会のようなリアルイベントだけでなく、WEB広告、コンテンツマーケティング、WEB面談営業といった新しいアプローチで顧客企業へアプローチすることが可能になり、潜在的な顧客の数は格段に増加している状況です。

このように、デジタル化をきっかけとしたBtoB市場への参入は、新規顧客の開拓や顧客接点の強化といった面でも成長が期待できるでしょう。

社会全体にデジタルデバイスが普及して、企業全体のITインフラが高められると、BtoB市場への参入障壁を低くなります。

コロナ禍によってテレワークやチャットツールの導入が推進される等、一気にデジタル化が進んだこともあって多くの企業がBtoB市場へ進出しやすい土壌は整っています。

こうした背景から、BtoB商取引が活発化していることが見てとれます。

EDIの廃止やインボイス制度による影響は大

BtoB市場への参入は、積極的な企業ばかりではありません。

様々な変化によって「参入しなければならない」と考えている企業もあるはずです。

BtoB市場への参入要因となりそうな変化は、「IP網化によるEDIの廃止」と「インボイス制度の導入」の2つです。

従来使用されているNTTのISDN回線を利用したINSネット は、デジタル信号でデータを転送する回線ですが、2024年1月にサービスを終了してIP網へ移行される予定になっています。

したがって、INSネットをインフラとするEDI(電子データ交換)システムを利用している企業は、EDIを新たなインフラであるIP網へ移さなければなりません。

この転換を機に、より利便性の高いBtoB専用のECサイトを導入しようという企業が増えてきています。ECサイトであれば、EDIでは難しかったマーケティング施策を講じることができ、施策の効果測定と改善による事業拡大の可能性が高まるからです。

適格請求書等保存方式、通称インボイス制度の施行もEDIの廃止と同様、BtoB参入のきっかけになっていると考えられています。

インボイス制度は、2023年10月から導入予定で、施行されると売り手と買い手の双方で新しい経理業務が発生します。

BtoBのECサイトを活用することで、電子インボイス(電磁的記録)の提供がしやすくなる等、経理の負担を軽減できる可能性が示されているため、この制度施行前にBtoBへ参入を検討する動きが出ているようです。

BtoB ECサイトに求められるもの

BtoB ECサイトは、一般消費者が閲覧するBtoC ECサイトとは異なる点が多くありますが、根本的な違いは、売上の上げ方です。

BtoC ECサイトは、顧客の総数自体を増やして売上を上げていくことが求められます。WEB広告を出稿する、実店舗やSNSと連携して認知度をUPさせる、インフルエンサー等新しい広報を積極的に活用してとにかく多くの人の目に触れさせることが第一目標となります。

一方でBtoB ECサイトの売上を向上させるためには、顧客の数よりも占有率が重要になります。例えば、オフィスで使用する文房具のうち、ファイルだけを自社のBtoB ECサイトで購入してもらうよりも、ボールペンからコピー用紙、トイレの備品までを一括して購入してもらう方が売上高は高くなります。

このように、BtoB ECでは、顧客の購買行動における占有率を高める施策を講じていくことがまず最初の目標として重要になります。

そして、この目標を達成するためには、BtoBのビジネスと同じ機能をECサイトにも搭載して、できる限り他の取引と同じような感覚で受発注を行える仕組みを作っていかなければなりません。

通常のBtoBビジネスと同様の機能

BtoB ECサイトには、顧客企業管理、見積もり、企業会員管理、承認といった通常のBtoBビジネスのやり取りで発生するフローが全てカバーできる機能が必要 です。

顧客企業の個々の与信や請求先、掛け率、販売対象商品を管理することによって、各受発注を効率化することが可能になります。

また、BtoC ECではほとんどのサイトが不要とする見積り機能ですが、BtoB ECサイトには不可欠です。見積り機能を搭載することによって、顧客企業は社内で稟議申請しやすくなり、購入における占有率の向上につながりやすくなります。

企業会員管理に関する機能も、管理者や部署といった複数人が一顧客として受発注を行うBtoB ECサイトならではの機能と言えるでしょう。

BtoC ECサイトならば、原則として一人が一つの会員アカウントを利用するため、複数人を1つのアカウントとして管理する必要はないからです。

企業会員管理機能には、企業管理者、部署、承認者、利用者といった情報を企業ごと包括的にデータ化する機能が備わっていて、必要に応じてアカウント追加もできるというのが一般的です。

なお、承認機能についても、BtoB ECに不可欠な機能です。シンプルな承認機能だけでなく、多段階承認、承認フローを備えた機能が搭載されていれば顧客企業の利便性はさらに高まるでしょう。

従来の商慣習を引き継ぐか、刷新するか

BtoB ECサイトを構築する場合は、従来の商慣習を丸ごと刷新する方が良い結果を生むこともあります。

例えば、オフィスで利用される大量の消耗品一つ一つに対して膨大な受発注データをやり取りしなければならないようなケースは、新しいシステムの導入が成果を発揮することもあります。

グループ企業全体の社員数が10万人を超えるような企業の場合、日常的な事務用品の購入だけでも膨大なコストが必要になります。また、備品購入の稟議申請をはじめとした購入までのフローにも多くの人員が必要になっている状況があります。

こうした企業の場合、類似商品の価格比較を行い、定められた経費で購入できる社内通販システムを新たに導入した方が、結果的に経費やそこにかける人的コストを削減できる可能性が高まります。

BtoB ECでは、ビジネスのやり取りをそのままECへ移し替えるような、従来の商慣習を踏襲する手法も効果的です。

しかし時には、従来の常識やこれまで当たり前と思ってきたプロセスを大胆に変えることも、功を奏す場合があります。

BtoB ECの実現がDXの一環に

現在のBtoB ECは普及して、転換期にいるという見方がなされています。

これまで通りのBtoB ECは段々と過去のものになり、より利便性が高められた仕組みや、時代に即したプロセスが提案され、広がっていく時期ということです。

コロナ禍によって対面を避ける動きが見られたのは、BtoCでもBtoBでも同じで、特にBtoBではITインフラの充実により急速にオンラインの購買に対する注目度が上がりました。

また、BtoCでは、オンラインで商品を注文して実店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pick up In Store)が普及し始めていますが、スムーズにBOPISシステムを運用するには、店舗と倉庫間の在庫管理と、注文管理、さらには顧客管理の連携が不可欠になります。そのため、BOPISを提供するには、まず企業がバックエンドシステムを一から構築しなおさなければならないケースが多いのです。

オンラインとオフラインをシームレスに連携させる必要性は、このように様々な場所で可視化されています。ECはもはや独立した一つのビジネスプロセスではなく、オフライン(リアル)と融合して双方が密接に関連し合っているのです。

そして、これこそがビジネスのプロセスを再構築すべき理由になっています。

BtoB ECの新たな形を模索することで、自社を取り巻く企業がDX推進に意識を向け始めるでしょう。DXはビジネスを加速させて、社会全体に活気を与える一つの重要なファクターになるはずです。