現場の声を反映した店舗アプリを活用して顧客体験を向上させる

店舗アプリは、顧客体験の向上やマーケティング展開に不可欠な要素になっています。

さらに昨今では、店舗アプリによる業務効率化の可能性も注目されてきました。

店舗アプリというと、ショップカードとしての活用や、顧客のリピート促進効果という狙いばかりを連想してしまいがちですが、従業員がスムーズに接客できるシステムをアプリ込みで構築することによって、業務効率化をも推進することができます。

本稿では、DX化施策の一つである「店舗アプリの可能性」について取り上げています。

スタッフの業務効率化を目指せるシステム構築をどのように設計していくべきか、現場の声を汲み取る重要性、そしてECやキャッシュレス決済、LINEアプリといったツールをリアル店舗とどのように連携していけば良いのかについて発信します。

店舗アプリでスタッフの業務効率化を実現するには

店舗アプリの開発黎明期には、UX(ユーザーエクスペリエンス)を高めることが最も重要視されていました。

ですが、ここにきて、店舗アプリは働きやすい環境づくりにも活かすというフェーズに達しています。アプリを通じて業務効率化を実現するには、UXから一歩発想を進めて、「顧客にも従業員にも役立つ」システムの構築が必要です。

ユーザー向けアプリだけでは効率化できない

ユーザー向けの店舗アプリといえば、ショップカードを兼ねていたり、近くの店舗を探したり、またクーポンやDMを受け取れる機能を搭載するというのが一般的です。

業務効率化を目指すためには、これらの要素に加えて従業員がスムーズに顧客対応ができるような仕組みを搭載する必要があります。

例えば、バーコードによる商品検索、アプリ上から商品の注文・決済できる等、会計のアクションが全てアプリで完結するような仕組みは、現場の負荷軽減につながる機能です。

アプリから商品検索ができるようになれば、スタッフも同じアプリを使うことで簡単にどの商品がどこにあるのかを知ることができます。新人の従業員であっても顧客に質問されたら滞りなく回答できるため、顧客体験の向上も見込めます。

また、商品検索やスムーズな会計をアプリで達成すると、顧客一人にかける接客時間を減らして回転率を上げることも可能です。

アプリを顧客と従業員のタッチポイント(接点)にすることにより、新しいかたちの接客も生まれていくはずです。

ビジネスプロセスの再設計が必要

業務効率化といえば、無駄を省くことがまず思い浮かぶかもしれません。

ですが、真の効率化を実現するためには、既存の接客をそのままアプリに当てはめるだけでは十分とはいえないでしょう。

これからの店舗アプリ開発には、まず、ビジネスプロセスそのものの再設計が必要になります。

アプリによる接客のメリットを効率化だけに置くのではなく、パーソナルな購買体験を演出する接客のためにどのようなアプリを設計すれば良いのか、それを検討することが重要です。

具体的には、アプリで会計が完結するようなシステムを構築して現金のやり取りをなくした分、購買履歴に基づく手厚い接客を行うようにオペレーション自体を変更する、といった方法です。

実際、都内ではアプリでしか注文を受け付けない飲食店が成功していますが、完全キャッシュレスで効率化されたフローを活かして、アプリに蓄積された顧客データによるパーソナルな接客を行なっています。同じ商品を何度も注文している顧客には、それに合うサイドメニューを提案する、初めて来店した顧客にはシステムの説明やおすすめメニューの案内をする、といった「顧客の顔が見える接客」は、リピーターやロイヤルカスタマーの育成につながるはずです。

コロナ禍によってキャッシュレス決済は一気に普及しました。決済系アプリのユーザーも増加しているため、今だからこそ思い切った施策へと舵を切れるタイミングといえるかもしれません。

店舗アプリ開発に重要なのは「現場の声」

店舗アプリを実際に利用していくのは現場スタッフです。

現場のリアルな声を活かすことが真の効率化実現へとつながるのはいうまでもありません。

コロナによって認知が高まったものの一つに、キャッシュレス決済の他、オンライン接客も挙げられます。こうした新しい販売方法を時代に即したかたちで提供していくには、現場のリアルな実情のデータ取得が不可欠といえるでしょう。

オンライン接客

オンラインによる接客は、モニター越しで正確な色が分かりにくい、質感や匂いを感じられないといった制約があります。

一方で、マンツーマンのオンライン接客は一人の顧客にしっかりと時間をかけられるというメリットもあり、多忙な消費者や分刻みでスケジュールを動かしているユーザーにとって「あらかじめオンライン入店の時間を決められること」は魅力的に映ります。

店舗を訪れにくい顧客(遠方にいる、何らかのコンプレックスがあって入店がためらわれる等)にとっても、オンライン接客はデメリットよりメリットの方が大きいと捉えられます。

ただし、商品を実際に見られない分、体験価値を得やすいシステムづくりが必須となってきます。

顧客満足度を高められるオンライン接客のシステムを構築するためには、現場のノウハウとIT技術の連携が不可欠です。どちらが欠けても、顧客から支持される接客は生まれません。

例えば、コスメならBA(ビューティアドバイザー)やBC(ビューティカウンセラー)が、普段どのようなノウハウを用いて顧客に製品をすすめているのかをヒアリングし、オンラインに落とし込む必要があります。

家電であれば、通販番組のようにスタッフが実際に製品を使用してみたり、組み立ててみたりといったデモンストレーションが効果を発揮するかもしれません。

現場のスタッフはまた、オンラインに必要なツールを操る技術を習得してスムーズな接客を行わなければなりません。顧客に高い体験価値を提供するためには、システム構築の他、従業員のヒアリングや研修もセットに検討していく必要があるでしょう。

在庫検索

デジタルによる在庫管理と検索は、今日働き始めたばかりの新人であってもどこに何が置かれているのかを知るために便利なシステムです。

大型店やチェーン店の場合、パートやアルバイトの入れ替わりが激しいと顧客に何か聞かれても分からずに戸惑ってしまうケースがあり、「ここのお店の従業員は聞いても何もしてくれない」と顧客満足度を下げてしまうリスクがあります。

アプリによる在庫検索はこうした課題を解消するのに役立ちます。アプリを使っている顧客は従業員に聞かなくても自身でアプリを操作することによって必要なアイテムを見つけることができるでしょう。

また、従業員も同じアプリを使うことで、誰でも商品在庫の場所を即確認することができます。

なお、在庫検索システムの構築にあたっては「通称名が複数あるアイテム」、「表記ゆれしやすい商品名」等をどう捌いていくかという課題もあります。さらに、現場で使いやすいデザインにする必要もあります。検索画面までどのように遷移させるか、ボタンのサイズや位置はどのようにしたら見やすいか等は、現場で働くスタッフによくヒアリングし、状況に応じてアップデートを行なっていくと良いかもしれません。

店舗とアプリ(デジタル)を連携

リアル店舗とアプリというデジタルを連携させることで、より個人個人に合わせた接客が展開しやすくなります。

令和は、多様性が重んじられるようになり、個人の価値観や個人の考えが尊重される風潮が高まっています。ショッピング体験もよりパーソナライズされたものが喜ばれる傾向にあり、店舗アプリによる業務効率化は、「事務的な接客」に向かうものではないことを意識しておくべきかもしれません。これもDX化のもたらす新しいタッチポイント作りの一つと言えるでしょう。

令和の接客を叶える店舗とアプリの連携、キーワードはEC、キャッシュレス決済、そしてLINEアプリ(LINEミニアプリ)です。

これらによって、デジタルでも気軽に顧客接点をもつことができます。

ECとの連携

アプリにオンラインショッピングの機能を搭載することで、顧客は実店舗とECをより横断的に利用しやすくなります。例えば、オンラインショッピングのお気に入りリストを、店内の買い物リストとしてそのまま利用したり、SNSで着こなしやインテリア例を見て購入に進んだり、といったことができるようになるでしょう。

企業は、アプリにECを連動させることで顧客の購買履歴や行動履歴を取得しやすくなるという利点が生まれます。

また、自社ECを周知したい時にも、ECとの連携は役立つはずです。楽天市場やAmazonといった大手モールに押されがちな自社ECですが、アプリを活用することで新たな局面が見えてくるかもしれません。

キャッシュレス決済連携

キャッシュレス決済は、ガラパゴス化しています。お店によっては対応していないサービスもあるため、消費者は、複数のキャッシュレス決済サービスをシーンに応じて使い分けているのが現状です。

より多くのサービスに対応するためには、店舗が各サービスごとの専用端末を用意する必要があり、コストもかかります。

ですが、アプリと特定のキャッシュレス決済サービスを連携することで、顧客にメリットを提供しつつ利用端末をある程度限定する等、キャッシュレス関連のコストを削減することができるかもしれません。

実際、大手スーパーマーケットチェーンは、アプリ上からの注文決済にもキャッシュレス決済を利用できるように連携し、自社ポイントとキャッシュレス決済サービスのポイントをそれぞれ取得できる機能を搭載しています。

それぞれのポイントを一回の買い物で貯められるのは消費者にとってもメリットがあるので、アプリダウンロードを促進する効果も見込めます。

LINEアプリの活用

LINE公式アカウントやLINEミニアプリは、DX化の具体策に悩む実店舗も導入しやすいツールです。

LINE公式アカウントは、顧客に「友だち追加」してもらうことでメッセージやクーポンを配信できるサービスです。DMや店舗のネイティブアプリ(アプリストアからインストールして使うアプリ)の通知よりも開封率が高い傾向にあるため、顧客とのタッチポイント作りとしても有効なプロモーションです。

2020年からサービス提供がスタートしたLINEミニアプリは、店舗の会員証(ショップカード)や店内オーダーといったサービスを利用することが可能で、LINEユーザーであれば誰でも使いやすいのが利点です。

導入方法には、オリジナルのサービスを一から開発する「個別開発」と、特定機能を簡易的に導入する「パッケージ」があります。どちらも、独自のアプリを開発するより比較的コストを抑えられるのも魅力です。

消費者にとっても、わざわざアプリをダウンロードする必要がなく、LINE利用の延長線上で登録、活用できることはメリットの一つになるでしょう。

LINEは、多くの人がコミュニケーションツールとして使っているため、利用に対する抵抗が少なく、自然な形でオフラインからオンラインへと顧客接点を移動させやすいツールです。

現場と顧客が使いやすいDX化の検討を

リアル店舗の成長戦略にも欠かせないDX化は、現場の声をいかに反映させて計画していくかが重要です。

実店舗がメインであっても、デジタルに顧客接点を作ることで顧客の行動や購買パターンを把握することできるようになります。

デジタル化・効率化できることをアプリに任せることによって、本当の意味でパーソナライズされた接客も実現しやすくなるでしょう。目指すべきは、デジタルを活用して現場を効率化し、その結果として顧客体験価値を上げることです。