オーバーストアはなぜ起こるのか。商圏を捉え直し課題解決を

「ターゲットエリアに店舗が密集している」
「オーバーストアをどう解消したらいいかわからない」

とお悩みの方へ。大型商業施設の進出や古い戦略等で、各地でオーバーストアが発生しています。オーバーストアが進むと、坪当たりの売上減少やビジネスの均質化などが起こり、その商圏全体に悪影響を与えかねません。

この記事では、オーバーストアが進む背景や解決するための具体的な方法をご紹介いたします。

社会の変化がもたらしたオーバーストア

「店舗過剰」を意味するオーバーストアは、その商圏の需要以上に店舗がある状況を指します。

かつては“大店法”(大規模小売店舗法)の制定により、大規模店舗と中小の小売業を保護する動きがありました。しかし海外の圧力などから2000年に廃止することとなり、現状としてオーバーストアに歯止めをかけられていません。

オーバーストアはなぜ起こるのか

オーバーストアが起きてしまう大きな原因は、以下の4つです。

  • ・大手企業の出店合戦
  • ・バブル時代から変化しない戦略
  • ・消費行動の変化
  • ・人口の減少

大資本を持つ大手企業は急速に商業施設開発進め、地方にまで多くの店舗を出店しています。ドラッグストアや食品コーナー、アパレルなどの複合施設を次々と建設すれば、オーバーストアの発生は避けられません。

またバブル時代の戦略を引きずり、とにかく出店して消費者の需要に応えようとする傾向もオーバーストアを生み出す一因です。かつてのバブル時代に大量に出店した店舗が、バブル崩壊後も残り続けているケースも少なくありません。

インターネットやデバイスの発達による消費行動の変化も、オーバーストアの大きな要因です。今や食料品もECで購入できるようになり、わざわざ店舗に出向く機会が減少しました。

またコロナ禍による行動規制で、消費者はECを利用せざるを得ない状況になっています。新型コロナウイルス感染症の長期化で生活様式まで変化しており、これまでリアル店舗のみで買い物をしていた消費者もECの利用に抵抗がなくなっています。その結果、ECと店舗の両方を必要に応じて使い分ける消費者が増え、「店舗でモノを購入する」以外の選択肢が増えたのです。

さらに日本は少子高齢化が進み、人口自体が減少しています。高齢者が多いエリアのスーパーマーケットなども、オーバーストア状態を招いています。

総じてこれらは社会の変化であり、オーバーストアは社会変化に順応できていない結果と言わざるを得ません。

オーバーストアを避けるべき理由

その商圏の購買力を上回る量の店舗があると、まず以下のような悪影響が起こります。

  • ・坪当たりの売上高の減少
  • ・ビジネスの均質化による弊害

■坪当り売上高の減少

オーバーストアが進むと、供給過剰によって坪当たりの売上高減少が起きます。特に小売店の売上高の減少は顕著で、この30年あまりで坪当たり50%程度まで減少してしまったというデータもあります。

■ビジネスの均質化による弊害

似たようなドラッグストア、似たような日用品雑貨店…と均質化した店舗が並ぶと、消費者はどの店舗で買い物をすればいいかわかりません。

「どこも似たような商品しか置いていない」とその商圏自体に飽きてしまえば、新しい発見を求めて他の商圏に移動したり、ECサイトで物色したりすることで客離れが起きてしまいます。

オーバーストアが進むあまり、自社内の製品が競合する「カニバリゼーション」を起こす企業も増えており、商圏を見直すなどの対策が急務となっています。

またビジネスが均質化で顧客への提供価値が酷似すれば、大幅な値引き合戦が起こりがちです。値引きによってさらに坪当たりの売上高は減少し、利益は減少する一方です。そして価格競争に負ければ、衰退や撤退を余儀なくされます。

オーバーストアの課題を解決するために、市場でも様々なサービスが生まれています。それらを上手く活用したり商圏を捉え直したりして、オーバーストアの解消を目指しましょう。

オーバーストアの課題を解決するには

オーバーストアの解決には、以下のようなアプローチが有効です。

  • ・人流の変化を把握
  • ・店舗規模を縮小
  • ・売り場の再編成
  • ・需要予測

順番に解説します。

人流の変化を把握

コロナ前後で人流は変わっています。その人流の変化を把握することで、自社の商圏がオーバーストアであるかどうか、1つの指標とすることができます。

人流は5年に1度行われる国勢調査データを参照する企業が多いものです。しかし新型コロナウイルス感染症は2019年頃から急速に広がったため、国勢調査では正確なデータを得られません。

そこで商圏を分析できるツールを活用すれば、人口動態以外にターゲットとする顧客層や移動手段、経済状況などを知ることができるのです。人流の把握は、新たな出店地の策定にも活用できます。コロナ禍で店舗運営に悩んだり移転を考えたりしている小売店には、人流の分析が有効です。

店舗規模を縮小

オーバーストアを解消する1つの方法として、店舗規模の縮小も有効です。店舗の多さが商圏の需要を超えているのですから、規模を縮小すればその商圏内の需要に収めることもできます。

昨今では消費者の生活圏や自宅に近いワンマイルでの買い物需要が高まっており、住宅地に近いエリアでの出店が増えています。

特に小型店舗では、慢性的な人不足が課題です。さらにECの利用増加により、需要はあるもののリアル店舗では坪当たりの売り上げが低下する店舗も少なくありません。非接触で購入できるECの需要が増えると、大量の在庫を管理できる店舗スペースも無用の長物となってしまいます。

すでに百貨店でも店舗規模の縮小傾向が始まっており、オーバーストアが進む小売店にも有効です。コンビニエンスストアでも1坪(3.3平方メートル)という超小規模店舗を出店しており、小型化が進んでいます。

小型なれば当然店舗全体が小さくなるので、大きな在庫スペースは用意できません。小型店舗では商品を試すだけの「体験型店舗」、店舗受け取りや配送のみを担う「ダークストア」、対面接客を行わない「無人店舗」など、特定の需要に特化したコンセプトが必要です。

小型店舗について、詳しくは「小型店舗はミニマルに多様化。「勝つための縮小傾向」がトレンドに」をご参照ください。

売り場の再編成

AIが様々な分析を行い、その店舗の売り場編成を提案してくれるサービスもあります。店舗の商圏の特長や人口動態の変化を分析し、店舗ごとに期待される販売金額の推計や最適な商品の構成、販売計画の作成まで支援してくれるのです。

これは大手飲料会社とマーケティング会社が開発したサービスを食品業界向けに提供したサービスで、食品業界での活用は初となります。

例えば周辺の勤務者人口が減少していればボトルコーヒーの販売ポテンシャルが増える、夜間人口が減少すれば機能性飲料のポテンシャルが減る、住宅地の昼間人口が増えれば大容量ボトルの販売ポテンシャルが増える、といった具合でデータに基づいた提案が可能です。

参照:AIを活用し、小売業界の狭小商圏化に対応した売り場提案を強化

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000469.000039153.html

需要予測

該当商圏の需要予測には、地理情報システム(GIS)も有効です。地理的な位置を手掛かりとして、位置に関する空間データを総合的に分析したり可視化したりすることで、その商圏にどれだけの需要があるかを予想できます。

GISデータの運用により、商圏範囲や競合店、店舗施設が持つポテンシャル、消費支出の調整といった確認が可能です。さらに需要予測計算の組立ができ、店舗の吸引率や「いくら売り上げが期待できるか?」という需要額が計算できます。

需要予測計算の組立には消費者目線の精巧な商圏範囲や競合店の設定が重要です。例えば地図情報の調査・制作・販売を行う株式会社ゼンリンによると、需要予測でGISデータを活用したことで調査分析作業が1/3にまで時間短縮できたという事例もあります。

参照:ゼンリンマーケティングソリューションズ 精度が上がった「需要予測」

https://www.zenrin-ms.co.jp/blog/2022/007/

商圏を捉え直し古い概念から脱却を

少子高齢化やコロナ禍における消費行動の変化により、小売店もオーバーストアが進んでいます。オーバーストアを解消して利益を上げるためには、商圏の捉え直しが必要です。

どんどん店舗を拡大するという考え方よりも、商圏に見合った店舗運営を行うことで無駄がないか見直し、利益を高めるという姿勢が求められています。

大手商業施設は“足元商圏”へフォーカス

大規模な施設で集客力を強みとした大型商業施設も、昨今では“足元商圏”での集客に注力し始めています。コロナ禍によって3割程度売り上げを落としましたが、これを機に地域の商圏を捉え直すことで回復を図っているのです。

利用者が天候や季節を気にせず外出できる範囲を指す“足元商圏”は、来店比率が高く費用対効果も期待できます。店舗から近い範囲として“一次商圏”もありますが、足元商圏とは範囲が異なります。

一次商圏は店舗から10~15分程度の範囲を指しますが、足元商圏は5分程度と距離が大変近く、文字通り足元にある商圏である点が特徴です。

新型コロナウイルス感染対策の一環であった緊急事態宣言は解除されたものの、県外の移動に躊躇する消費者は少なくありません。移動が容易でなくなった昨今では、大型施設よりも、パッと買い物ができる足元商圏こそがねらい目なのです。

変化し続ける商圏を捉えることが重要

コロナ禍で商圏も大きく変化しており、昨今では前述した“足元商圏”が有効とされています。しかしアフターコロナを迎えればリアル店舗の需要が高まる可能性があり、小売店は変化し続ける商圏を正確に把握することが重要です。

商圏を把握できるスキルは、小売店にとって大きな武器となります。本記事でご紹介したように商圏を把握するための技術はどんどん増えており、企業としては早急な分析技術の取得がポイントです。

各企業が自店舗の商圏を把握してそれに見合った出店計画ができれば、オーバーストアは解消していくでしょう。