D2Cで事業を拡大するために。新時代のブランドマーケティングが企業成長のカギ

D2Cは、小売店を通さずに企業が直接消費者と取引する方法をいいます。

D2Cによって、ブランドを長期的に好んでくれるファン層を形成する、企業ならではのブランド体験を提供するといったことが可能になり、短期的な費用効果以上に企業成長を目指せるプロジェクトになり得ます。

D2C成功の鍵を握るのは、企業がDX化によって効率よく収集できるようになったデータの活用です。
企業がターゲットとする購買層を的確に見極め、「自社ECで買うことの意義」を明確に意識することで、消費者に求められるD2Cを達成することができるのです。

本稿では、今国内でD2Cが注目されている背景をふまえて、ビジネスとしての成功を考えた場合のD2Cとマーケティング施策の関連性についてまとめています。

また、インフルエンサーが行うP2C、仮想現実空間でアバターがデジタルアイテムや物理商品を取り扱うD2Aなどの最新トレンドについても紹介しています。

D2Cが注目される背景

直接販売の一形態であるD2C(Direct to Consumer)は、日本語で消費者直接取引といいます。

代理店や小売店を通さずに企業が販売する手法は、直営店舗だけでなく自社ECやSNS、百貨店に設けられた特設コーナーなどさまざまで、特にアパレルやコスメの分野で注目されています。

D2Cが注目される背景には、コロナウイルスによって高まった巣篭もり需要と、企業のブランディング確立戦略があります。

コロナ禍によって拡大が加速したEC市場

ステイホームや中食文化の浸透によって、食品・飲料のD2C規模は急速に拡大しています。

インテリア小物や家具、雑貨などのライフスタイル関連商品も、今まで以上にD2CのEC市場が拡大しています。コロナ禍によって自宅で過ごす時間が増えたことによって、自宅にお金をかけよう、手をかけようという需要が高まったためといえるでしょう。

実は、D2Cは2017年頃の米国ですでに存在していた方法です。その後、日本でもD2Cが聞かれるようになりましたが、現在ほど盛り上がる状況にはなりませんでした。

日本で今までD2Cが注目されにくかった理由は、TV、チラシが他国より発達しているからだとされています。TVやチラシといった媒体の影響力が大きいことで、効果的な宣伝ができる小売店・代理店が売上を伸ばしやすく、D2Cが参入するスペースが生まれにくい環境にあったのです。

さらに、日本はコンビニの数も多く、米国などの広大な国より人口密集地域の利便性が高い傾向にあるため、D2Cのニーズ自体が発生しにくい状況にありました。

ですが、コロナウイルスによって外出自粛やワンマイルを意識した行動が増えたため、D2Cの良さが注目されるようになりました。

ブランド体験と結びつく購買行動

ブランド体験は、ブランドの世界観をユーザーと共有し、企業のファンを増やすために重要な戦略です。ブランド体験は、消費者に「このブランドは自分のニーズを満たしてくれる」、「このブランドはまるで自分のために作られたような商品を提供してくれる」と感じてもらうのが目的です。

ECで商品を購入するユーザーは、商品の紹介写真と実際の商品の見栄えが大きく異なっている、説明文やブランドのスタンスにギャップを感じる、といった体験をすると次回からの購入を控えるという傾向がみられます。

そういった意味で、掲載写真や説明文にこだわってブランドイメージを統一できる自社EC、SNSを使った販売スタイルなどはブランドイメージをプロデュースする意味でも有効な販売方法といえるでしょう。

D2Cは、消費者と直接的な接点をもつことでブランドイメージをダイレクトに発信してブランド体験を提供できるからです。

D2Cを事業として成功させるには

とはいえ、D2Cを成功させるためには工夫と戦略が必要です。

D2Cを展開させる上でよくあるミスは、具体的な市場規模が想定できていない、類似アイテムとの競合を加味していないといった、事前リサーチ不足によるものです。

D2Cはブランド体験を提供する機会でもあるため、計画的に成功への道筋を描く必要があります。

ビジネスとして考えるべきポイント

自社ECで商品やサービスを販売する時、考えるべきなのはNo.1戦略です。

これは「〇〇といったら■ ■ 社」のように、取り扱う商品をキーワードと結びつけて広く周知させる戦略で、前述したような事前リサーチによって成功イメージをまず構築させることが必要になります。

また、ユーザーが自社ECで購入することで得られる利点を明確化して、自社ECの利用がポジティブなブランド体験になるよう構築していくべきでしょう。

ECでの障壁を取り除く

社内のDX化がなされている企業であれば、基幹システムと連携するだけで消費者と直接的につながれる自社ECを作れると考える風潮もあります。

ですが、ECを開いただけでは即時的な売上を達成することは難しいでしょう。

よく発生しがちな問題は、「目的の明確化がなされないまま運用する」、「社内の連携が取れないまま費用対効果で意見が割れて運用が妨げられる」、「ノウハウや情報収集をおろそかにしたまま見切り発車する」の3つです。

大手ECサイトがこれだけ身近な存在になった今、顧客には自社ECで購入する動機が必要です。

ほかでも購入できる商品を、敢えて自社ECで購入してもらうという目的を達成するためには、まず社内でその理由を明確に言語化できなければならないでしょう。

消費者が自社ECを使う意義を曖昧なまま自社ECプロジェクトを進めると、サイトの操作性や利便性を追求することが難しく、ユーザビリティに影響が出る可能性があります。

サイト設立に伴う短期的な費用対効果も不明確になるおそれがあり、社内決裁がうまく通らなくなるという弊害も予想されます。

自社ECで購入することによって、消費者がメンテナンスサポートを受けやすくなる、購入金額に応じたカスタマーランクが設定され、特典を受けられるなど、「自社ECならではの強み」を明確に提示する必要があります。

この強みを設定するにあたっては、商品やサービスの購買層がどのようなことを望んでいるか、それを知る必要があります。つまり、「ノウハウや情報収集をおろそかにしたまま見切り発車」してしまっては、短期的に費用対効果を見出せるECを構築することは難しいでしょう。

競合他社がどのようなECを備えているか、現在のECにおけるトレンドや傾向はどのような状況なのか、といった対外的なデータの取得・分析も重要です。

マーケティング施策が肝となる

No.1戦略において必要になるのは、事前リサーチと自社商品の特性を深堀りすること、そして市場の把握です。

多くの類似品があふれている場合、シンプルなキーワードのみでNo.1の認知を獲得するのは難しいといってよいでしょう。例えば、「フルーツゼリー」などのアイテム名称のみで消費者に自社を認知させるのは不可能に近いといえます。

No.1戦略を成功させるためには、自社の商品を購入するユーザーの年齢や興味関心、購買傾向などのデータから、商品を補強するキーワードを設定していくのが有効です。

例に挙げたスイーツなら、「エシカルな材料だけを使ったフルーツゼリー」や「有名シェフが監修 ハーブで味わいを深めたフルーツゼリー」など、商品の下層にある潜在的なキーワードを的確に拾い上げることが成功につながります。

これは、マーケティング施策とも関連する話で、販売戦略の展開と密接にリンクします。D2Cも、効果を上げるマーケティング施策と同様、いかに自社が得られるデータを活用するかが鍵を握るのです。

D2Cが持つ新たな可能性

D2C自体、日本国内ではコロナ禍によって認知が広がり、拡大傾向となった新しいトレンドの一つといえますが、このD2Cはもう一つ新たな可能性を連れています。

それが、クラウドファンディングとの連携や、P2C、D2Aといった新しい販売のあり方です。

クラウドファンディングとの相互作用

クラウドファンディングには、いくつか種類がありますが、D2Cと連携してよく行われているのは、消費者が参加(お金を払って)して返礼品として商品・サービスを受け取る「購入型」です。

ブランドがこの購入型クラウドファンディングを行うと、資金が少ない状態でも商品開発やテストマーケティング、顧客獲得、ブランド認知を効率よく実行することができます。

SNSでの集客がうまくいかない、まだ立ち上げたばかりで広告を打ってもブランド認知が成功しないかもしれない、という企業にとって、クラウドファンディングは使い方次第で販売方法だけでなく、効果的なマーケティング施策にもなり得るといえます。

クラウドファンディングは、その構造上、消費者の共感を得てファンとするストーリーブランディングが行いやすいシステムになっています。ストーリーブランディングとは、商品開発の道のりやユーザーが共感を得られるような物語を活用することで、多くの類似品があふれる中で、他商品との差別化を図りやすいマーケティング手法です。

企業への愛着や共感を喚起する要素となります。

クラウドファンディングの「ストーリーを伝える」という要素をD2Cのサイトにも組み込むことで、顧客の興味関心だけでなく、信頼をも得られる可能性が高まるでしょう。

新しいキーワードP2C、D2A

P2CはPerson to Consumer、D2AはDirect to Avatarのことで、いずれもD2Cに関連して注目度が高まっているキーワードです。

P2Cは、フォロワーが多く情報を拡散しやすいインフルエンサーが行うことが多い手法で、企業ではない個人が企画や製品開発を行って、消費者に直接販売する手法のことをいいます。いわば、D2Cの個人版というところで、すでにフォロワーというファン(顧客)を一定数確保していることから、リスクが低く確実な売上が見込みやすいビジネススタイルといえるでしょう。

D2Aは、メタバースのような3次元仮想空間の中でアバターが直接商品・サービスを販売する手法です。散策やライブ鑑賞、ショッピングなどができる拡張現実「メタバース」は、また途上であり、決済や売買についても法的に整備しきれていない面があります。

しかし、仮想現実の中で身につけられるデジタルアイテムや、現実世界で使う物理的な商品をアバターが販売するというスタイルはすでに各ブランドが実施しています。

世界的なアパレル企業も、デジタル世界でのブランディングは重要視していて、ナイキやラルフローレン、グッチなどのハイブランドも続々とデジタル衣料をリリースしています。また、アストン・マーティン、テスラのような高級車ブランドも、自社の車の仮想版をリリースするなど、すでに仮想現実もブランディング確立の場として活用され始めています。

D2Cは新時代のブランディング、マーケティングとも結びつく

D2Cは、クラウドファンディングや仮想現実といった新しい土俵においても有益な販売方法となり得ます。

自社ECの導入にはハードルも高く、通販サイトを作っただけ、SNSで宣伝しただけでは購入に結びつきにくいものですが、自社ECを通じてブランドを継続的に愛してくれるユーザーが増えることで、ブランディングの確立や自社の中長期的な成長にもつなげていくことができます。

D2Cは、成功させることでオンとオフの両方における消費行動を喚起して、新しい価値観と購買体験を提供し続けることもできます。

DX化によるデータ活用が、次世代の消費行動にマッチするブランド体験の構築にもつながっていくでしょう。