OMO時代だからこそ高まるオーダーマネジメントシステムの重要性

2020年度のEC市場規模は2019年度比2.6%増の20兆円になる見込み(2020年12月段階)との予測が出されました。また、オムニチャネル・コマース市場は56.7兆円と、コロナ禍の中でも前年度より伸長する推測となっています。
EC市場、オムニチャネル・コマース市場ともに2026年には29兆円、80兆円と今後も拡大するとされ、小売市場の大きな軸となっています。
こうした予測では「EC市場」「オムニチャネル・コマース市場」「実店舗での小売市場」というようにチャネルが分かれてしまいますが、実際の購買体験では連携していることが多いものです。オンラインからオフラインへ、オフラインからオンラインへ、シームレスな購買が行われるためにはチャネル間連携のうえで不具合のないよう運用する必要があります。
小売市場を支えているツールは様々に開発されていますが、デジタルシフトが進み、データ統合によってチャネルの溝が埋まりつつあります。それがOMS(オーダーマネジメントシステム)と呼ばれるシステムです。
本記事では消費者の購買行動の変化に伴って重要性を増しているオーダーマネジメントシステムについて解説します。
目次
変化した消費者の購買行動に適応できるオーダーマネジメントシステム
本メディアや弊社のウェビナーでも何度かお伝えしてきている通り、消費者の購買行動は2021年の現在多岐にわたっています。同じ商品を買うにしても、その時々で実店舗、自社サイト、大手モールと使い分け、受け取り方も多様な選択肢の中から最適な時と場所を選んで購入しています。
一箇所のチャネルのデータしか見ていない場合、購買行動はつながって見えず、点でしか捉えられなくなってしまうのです。
アフターデジタル、OMOといった概念を導入して顧客体験を向上させたいと思っても、バックシステムがバラバラで顧客情報や在庫情報が統合されていない状態では難しいでしょう。
ネットショップを開設してオンラインの購買ニーズに応える、店舗受取や試着システムを構築する、など消費者に対応した施策を都度講じていくだけでは、購買データの蓄積、自社の中長期戦略の確立といった点に不安が生じます。
OMOを意識した施策は、消費者のニーズに対応しつつも自社の成長と新たな可能性を開拓するもの、次世代に追いついていくためのものでなくてはなりません。
こうした観点において、OMS、オーダーマネジメントシステム導入は一つの有効な手段になります。
オーダーマネジメントシステムとは
オーダーマネジメントシステム(Order Management System)はその頭文字を取ってOMSとも呼ばれる受注管理システムです。受注から配送まで管理でき、フロントからバックエンドまでカバーする機能を搭載しているものです。
オーダーマネジメントシステムは、ECサイトや実店舗、倉庫など多拠点の情報を一括で管理することで情報がリアルタイムで流れ、すべてのチャネルでステータスを確認できるのがメリットです。
多拠点倉庫と店舗在庫の管理や、チャネル横断での受注対応、匿名配送のようなプライバシーに配慮した配送の受注、店頭・ECを横断するギフト対応を可能にするなど、様々な業種で活用の可能性が広がります。
オーダーマネジメントシステムが従来の管理における課題をどのように解決できるのか、まずは従来の受注管理における課題を挙げてみましょう。
従来の受注管理の課題
これまではEC、店舗、倉庫の情報がバラバラに管理されていることが多く、データもチャネル別で保持していたため様々な課題がありました。
チャネル別にデータ管理がされていると、ネットで購入した履歴と実店舗で購入した履歴がバラバラで購買動向の分析がしにくくなる、EC・店舗での在庫予測や問い合わせ対応が煩雑になる、クーポンやポイントを横断的に利用できないなど、事業者と消費者の双方でデメリットが生じてしまいます。
利用しにくい店舗やサイトから消費者は離れていきますし、フォローを行うカスタマーサポートの業務負担が増える可能性も出てきます。
そして、ロイヤルカスタマー育成、ブランドファンの形成といった施策を行いたい場合、情報管理が統合されていないのは解決すべき大きな問題といえます。
ボトルネックが発生しやすい
システム全体としてデータ連携がされていないと、データに齟齬が出た場合にエラーとなり、手作業でエラーを解消していく必要があります。それがタイムロスにつながり発送が遅れ、エンドユーザーの満足度に影響する結果になることがあります。
また、エラーの原因を探るためにリソースが必要となり、コストも発生してしまいます。
連携や引継がなされないまま同じようなエラーが起こり続けると信頼が損なわれ、ブランドイメージに悪影響を与えるおそれもあります。
消費者は快適な購買行動を好みますが、この快適には「スピード」も含まれます。受注生産やこだわりを強みとする製品でない限り、ボトルネックは顧客離れをもっとも警戒すべき事柄の一つといえるでしょう。
作業効率の低下
複数拠点で別々のシステムを利用していると、データ管理が煩雑となり作業効率も低下しがちです。
食品などの消費期限がある商品の場合は特に在庫管理に手間がかかり、頻繁な棚卸しが必要なケースもありました。
幅広い世代の消費者が日常的にECを利用するようになり、買い物におけるスピードは未だかつてないほど加速傾向にあります。
多くの消費者は、店舗で買い物をするのと同じような感覚でオンラインショッピングをしています。ラストワンマイル問題を克服して、当日配送を「当たり前」にするスーパーやドラッグストアも増えています。今だからこそ、作業効率について真剣に考えるべきでしょう。
情報共有が困難
データ管理も課題となります。一人の顧客、一つの商品に情報が紐付いていないと、情報共有がしにくくオペレーションの問題点が見過ごされて放置されるリスクがあります。
カスタマーサポートで顧客に対し即時対応できなかったり、倉庫からの出荷作業に影響が出たりすると、その影響は小さくありません。
また、分析のために膨大なデータを収集したとしても、各顧客のデータが適切に紐づけられていなければビッグデータを活かすことはできません。データ解析は、効果的なラベリングが必須とされています。オフライン、オンラインのシームレスな情報連携こそが、高度化した情報活用の鍵となります。
複雑なサービスの提供に伴う業務への負荷
「オムニチャネル、OMO、ECと店舗の連携が当たり前」の時代になると、販売するロケーションと在庫のロケーションが異なるケースや、販売に在庫の移動が伴うケースなど、従来のシステムのままではこれまでと異なる商品の販売、出荷、入荷業務が発生します。
そこで前述したような課題が取り残されていると、ますます業務負荷が増すという悪循環が起こりかねません。

オーダーマネジメントシステムで新たな連携を
EC、店舗、倉庫それぞれのチャネルをシームレスに繋げるオーダーマネジメントシステムであれば、これらの課題を解決できます。
これまで使っていたシステムをすべてリプレイスして新しく基幹システムを構築することは、時間的にもコスト的にも難しい場合が多いでしょう。そこでオーダーマネジメントシステムの出番です。オーダーマネジメントシステムなら各拠点のツールをAPI連携し、ECや店舗、あらゆる場所での購買行動に対応することができます。
通常のEC購買だけでなく、これまでに提供していなかった購買パターンでも、オーダーマネジメントシステムで対応することができるようになります。ECサイトで購買し、倉庫や店舗から在庫引当を行い、適切に商品を供給することは当然のこととして、店舗引取やロッカー受け取りなども可能になるのです。
オーダーマネジメントシステムは直感的に誰もが操作できる設計になっていて、難しいマニュアルを引き継いだり、データの統括管理のために多くの社員を配置しなくても運営が容易になっています。
操作しやすく明快なシステムは、店舗、倉庫、ECなどそれぞれの最前線で働く誰もが利便性を感じられるシステムと言い換えることができます。
オーダーマネジメントシステムで解決できる課題例
店舗とEC、そして倉庫といった多拠点のデータがシームレスに連携するとはどのようなことなのか、具体的に課題解決の可能性についてみていきましょう。
お歳暮シーズンもOKなギフト配送
多拠点の在庫管理が一元化されると、お中元やお歳暮といったギフト配送もOMOで展開できます。
店頭でギフトを選び決済、購買者が自宅から配送先を登録したら、ギフト配送をして倉庫から出荷、登録先住所へお届けといったオフライン(実店舗)、オンライン(住所登録)、オフライン(倉庫)といったサービスも展開可能です。
受発注が同時発生的に起こるホリディシーズンでも、在庫を一元管理していれば混乱なく進めていけるでしょう。
引当・配送の効率化
オーダーマネジメントシステムによって、ECの在庫、各店舗の在庫などを複数倉庫から迅速に出荷することができるようになります。
複数の倉庫があっても、一元管理によって実店舗もECも在庫切れや過剰在庫にならないような引当、配送ができるので、在庫に関わる様々なシーンでコストとロスを削減できます。
店舗、EC、カスタマーセンターの連携で顧客満足度に貢献
店舗とECだけでなく、コールセンターなどのカスタマーサービス部門と情報共有できるのがオーダーマネジメントシステムの利点です。
プライバシー保護を第一としつつも顧客情報を部門間で広く共有することにより、迅速な顧客対応が可能になります。
また、情報を一括で管理することによってデータ分析も容易になります。これまで並べて検討することができなかったデータ同士を組み合わせたり、比較したりしながら、新たな戦略の可能性を探すこともできます。
顧客情報が一元化されることで購買データの活用が容易に
オーダーマネジメントシステムを導入すると、顧客接客履歴、個々の購買履歴といった情報は一括化され、顧客満足度を高める施策を行ったり、ロイヤルカスタマーを育成したりと、有益な施策を展開することができます。
人員やコストをかけることなく情報を集約させることで、より建設的な事柄に注力できるようになり、企業としての成長戦略も描きやすくなるでしょう。

オーダーマネジメントシステムで情報は統合すべし
上の図にもあるように、様々な場所で得られる情報はすべて統合してOMSに持たせる必要があります。消費者の購買チャネルが多岐にわたる現在、ECだけ、店舗だけといったデジタル化はDX推進の妨げになりかねません。
消費者はEC、店舗を横断的に利用しているため、企業も同じように横断的にデータを取ったり施策を講じる必要があるのです。
しかし、広域的な展開を人力で行うにはどの業界もマンパワーが不足しています。人手不足による省人化や業務効率化は、経営課題として抱える企業がほとんどです。これらの問題も、OMSによって解消されるかもしれません。業務の効率化をはかることで経営コストの削減にもつながるでしょう。
顧客、運用の現場、経営とそれぞれの観点から見てもオーダーマネジメントシステムの重要性がお分かりいただけるのではないでしょうか。
コロナ禍により「新しい生活様式」が求められ、これまでよりも急速に変化していく消費者の購買行動に、テクノロジーは適宜対応を始めています。しかし、サービスの一部を個別にデジタル化しただけでは、ニーズに応えたとはいえません。これまでのビジネスの価値観では、時代に取り残されていくでしょう。
オーダーマネジメントシステムで新しいビジネスを構築してみてはいかがでしょうか。