UberからPayPayダッシュまで:自転車デリバリー最前線

昔の出前といえば、バイクや岡持ち片手のおつかいが当たり前でしたが、2020年現在では自転車を使ったデリバリーサービスが急速に広まってきています。

試しにインディードやマイナビバイトで「自転車デリバリー」を検索してみると、多くの求人がヒットします。

さらに今後は、Uber Eatsだけでなく、DiDi FoodやPayPayダッシュといった新たなサービスが参入予定。

この記事では、Uber Eat、出前館、DiDi Food、PayPayダッシュの4つのデリバリーサービスの現況について紹介しています。

また、自転車デリバリーサービスがどのような雇用形態なのか、今後どのように拡大していくのかについても分かりやすくまとめています。

Uber Eatsは順調に利用エリアを拡大中

Uber Eats(ウーバー・イーツ)は、米国カリフォルニア発の配車アプリ「Uber」から派生したサービスで、日本では2016年からサービスの提供がスタートしました。

黒地にグリーンのロゴがあしらわれた配達バッグを持った人を、街中で見かけた人も多くなってきたのではないでしょうか?

Uber Eatsの加盟店は、出前の人手や移動手段がなくても出前が実施できるようになります。

サービス提供開始当初は渋谷区や港区といった都心の一部地域でのみ利用可能でしたが、2020年3月時点で東京23区、埼玉、千葉、神奈川といった首都圏を中心に、宮城(仙台)、愛知(名古屋)、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、香川、愛媛、福岡など利用エリアが広がっています。

https://www.ubereats.com/jp

出前館も自転車デリバリーの求人募集を実施中

日本で初めての、全国の出前と宅配の注文ポータルサイトとして登場した出前館。現在は、全国2万店舗以上の情報を掲載するデリバリー総合サイトとなっています。

ここでも、「出前館」の自転車デリバリースタッフを募集しています。

2017年には、出前館のシェアリングデリバリー拠点にヤマハ発動機株式会社の電動アシスト自転車を導入する実証実験をおこなった実績もあり、早い段階から自転車による出前の可能性を重視していたことがうかがえます。

https://www.demaecan-jobs.com/

DiDi Foodは4月初旬から宅配サービスをスタート

中国の配車サービス滴滴出行(DiDi)のDiDiモビリティジャパンは、2020年4月初旬からUber Eatsのようなアプリを使ったデリバリーサービス「DiDi Food(仮)」を実施することを発表しました。

中国のDiDiがフードデリバリー業界に参入したのは、2018年のこと。国内ではまず、大阪市中心部でサービス提供を始める予定としています。

現在はバイクや自転車で活動する配達員の確保に動いている段階で、3月13日には、大阪にある本町コラボビルに配達パートナーをサポートする「パートナーハブ」が設置されました。なお、早期に審査やトレーニングを修了した配達員(配達パートナー)にインセンティブを付与するキャンペーンも実施しています。

デリバリー配達は、掛け持ちで働く人も多いので、今後はUber EatsとDiDi Food、異なるサービスで配達員として活動する人も増えてくるかもしれません。

PayPayダッシュは福岡で始動

ヤフー株式会社は、福岡県一部地域限定で利用できる「販売・配達サービスアプリ PayPayダッシュ」をリリースしました。なお、実験的なこのサービス提供をスタートするにあたり、オンラインとオフラインを結ぶ配達サービスについてはソフトバンクグループ株式会社が、物流のソリューションについてはイオン九州がそれぞれ連携してノウハウを提供しています。

PayPayダッシュは、Uber EatsやDiDiFood、出前館のように料理をデリバリーするのではなく、コンビニやスーパーの定番商品を届けるのが特徴です。お弁当やおにぎり、パン類、飲料やカップ麺などがデリバリー対象商品とされています。

700〜2,000円の間で最低注文金額が設定され、ユーザーは一度に設定金額以上の注文をおこなう必要があります。送料は3月31日までキャンペーンにより無料、以降は商品価格のほかに送料がかかると発表されています。

PayPayダッシュアプリから注文された商品を最短30分(30分〜1時間)で指定の場所まで届けるのは、自転車を使うデリバリースタッフ。注文を受けてから、店舗で商品のピックアップをして配送するまでを担います。

https://paypaydash.yahoo.co.jp/campaign/start/

PayPayダッシュのターゲットは高齢者と共働き世帯

PayPayダッシュの実証実験で検証する事柄には、本サービスの主なターゲット層である高齢者や共働き世帯など「日用品を近場に買いに行くのが難しい(時間がない)」という人に向けた、サービス提供のあり方を模索することも含まれています。

また、自宅だけでなくオフィスや事務所などを配達場所に指定することも可能で、飲み物やお菓子を「今すぐ欲しい」というニーズに応えるサービスにもなるかもしれません。

PayPayダッシュは、実証実験の結果次第で、取扱商品の拡充やほかの地域への展開も視野に入れていると発表されています。

自転車デリバリーの仕組み

詳細は各サービスによって異なりますが、自転車デリバリーサービスの多くは、デリバリースタッフが商品をピックアップして注文先まで配送するという方法でおこなわれています。

メモを受け取って注文をし、それを頼んだ人のところへ持っていく「おつかい」のサービス化ととらえるとイメージしやすいかもしれません。かつて紙の書類が仕事の大半を占めていた時代には、オフィス街を自転車で疾走するメッセンジャーが大活躍しましたが、現代のメッセンジャーは都市部ではなく住宅街にも進出してきたというわけです。

デリバリースタッフは、配達パートナーという名称で呼ばれることもあり、ユニフォームを着用して配送します。

何時から何時まで働くというシフトの概念がないため、隙間時間を活用した働き方や急に時間が空いた時の労働としても注目されています。

ラストワンマイルを支える自転車

自転車デリバリーは、ラストワンマイル(最終配送拠点からエンドユーザーまでの区間)をスムーズに運用するための救世主的な存在です。

車やバイクは渋滞や工事など道路状況の影響に配送時間を左右されるリスクがありますが、自転車は車と比較するとそのリスクはやや低めといえるでしょう。車やバイクが通行できない道も、自転車は通行を許可されている場合が多く、混んでいないルートを通ることで効率よく配送できるケースもあります。

また、環境保護の観点からも、自転車デリバリーのメリットはあります。

世界的な環境保全の取り組みが急務とされる昨今、企業としてエコを推進し、CO2の削減目標や環境に負担をかけないシステムを構築することは成長戦略に欠かせないポイントになっています。

自転車は、CO2を排出しないエコな乗り物で、ガソリンを消費することもありません。そのため、ラストワンマイルに使うには好都合な乗り物とされています。

自転車は自動運転につながるという予測も

もっとも、環境に優しいという理由だけで、UberやDiDiといった世界的大手の配車アプリがフード業界に自転車をもって参入しているわけではありません。

配送の分野は、近く自動運転車両がその業務の大半を担うのではないかとみられており、その未来を見越して顧客を今のうちに多く獲得しておこうという企業の狙いも予想されています。

自動運転の実証実験は、数年前から国内外で大小さまざまな試みがなされており、箱型の車を利用した配送方法、ロボットが玄関の前まで荷物を届けるタイプなどが散見されます。

自動運転がラストワンマイルを解決するツールとして日常的なものになるのは、まだ先のことでしょう。しかし、サービスを提供する企業はすでにその未来を射程圏内にとらえていると考えられます。

自動運転は「無人・商用・実証」レベルに到達?

自動運転は、ドライバーがすべての操作をおこなうレベル0(現在の多くの乗用車)から、レベル5までカテゴライズされています。

これは、あらゆる乗り物の標準化機構「SAE(Society of Automotive Engineers)」という米国の非営利団体が定めた定義で、日本はこれに準拠した開発をおこなっています。

  • レベル0:すべての操作をドライバーがおこなう
  • レベル1:ステアリング操作/加減速のどちらかをサポートする
  • レベル2:ステアリング操作/加減速のどちらもサポートする
  • レベル3:特定の場所ならシステムが制御可能(緊急時はドライバーが対応)
  • レベル4:特定の場所ならシステムがすべてを制御可能
  • レベル5:場所を限定せずに全てをシステムが制御可能

レベル1〜2は自動運転ではなく「運転支援技術」とされています。そのため、実際に自動運転と定義されるのはレベル3以降。しかし、レベル4以上は世界のどのメーカーも市販段階ではなく、実験およびコンセプトカーの段階にあります。

レベル3に相当する自動運転技術は実際に活用されはじめており、商用として無人の自動運転車がサービスを提供することは実証の段階に入っています。

内閣府も、2017年の段階で2020年には自動運転を市場化すると目標を掲げています。とはいえ、日本で公道を自動運転車が走行するためには、法改正の必要もあるため、今すぐに自動運転が自転車デリバリーにとってかわることはないでしょう。しかし、自転車デリバリーに自動運転が併用されるような未来は近いのかもしれません。

配送・物流はコロナウイルスの影響を受けるか:Amazon10万人の雇用増

デリバリーやECは、新型コロナウイルス(COVID-19)によって世界的に大きな影響を受けつつあります。

日本は3月18日現在、自粛要請や休校要請の段階であり、外出禁止や非常事態宣言には至っていませんが、欧州各国では要請よりも厳しい自宅待機の命令や渡航禁止といった措置がとられています。

これにともなって、これまで以上にネットで買い物をすませる人が増加。米Amazonは、ECの配送需要に応えるため米国内で10万人の新たな雇用をおこなうと発表しました。

また、雇用拡大にあたり、米国で2ドル/1h、EU諸国で約2ユーロ/1hの賃金アップも実施されます。

昨年は、英国ジャーナリストがAmazonの倉庫ピッカーやUberのドライバーとして潜入取材しまとめた書籍「アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した(ジェームズ・ブラッドワース)」が話題になりました。

確かに、自転車デリバリーやAmazonの配送の担い手はその多くがギグワーカーと呼ばれる、「単発の仕事請け負い人」です。労働組合がないことから不利な条件を一方的に突きつけられるというニュースもありました。

しかし、先に挙げた書籍の原題は「HIRED(雇われ人)」。つまり、雇用される人は誰でも、待遇や条件の違いこそあれ、ジレンマや苦労にさいなまれがちということを指しているともいえます。実際、書籍の中にはギグワーカーを監督し、そのミスをチェックする上司も、またさらに上の管理者に厳しいチェックを受け続ける身であるという描写があります。

配送のラストワンマイルを自転車が担うというデリバリーサービスは、コロナウイルスの感染拡大によって、さらにニーズが高まるかもしれません。未曾有の事態によって、サービスのあり方やワーカーの働き方が、予想とはまったく異なる方へ進化を遂げる可能性もあり得るのではないでしょうか。

さいごに

自転車デリバリーは、実証実験段階のもの、一部地域に利用が限定されているものもありますが、私たちの日常に着実に浸透しつつあるようです。

今後は、自転車デリバリーのように「今すぐほしいものを届けてもらう」という購買体験が増加し、ECに新たな価値観が創出されるのかもしれません。そしてその先にあるのが、自動運転によるラストワンマイル配送の日常化、という可能性があります。