デジタルプラットフォームは悪か?公取委の見解とは

AmazonやApple、Facebook、楽天市場など、あらゆる市場に介在するデジタルプラットフォーマー。日本の公正取引委員会は、2019年12月に同事業者の取引における考え方を公表しました。

デジタルプラットフォーム事業者が消費者に対して優位的な立場に立っていること、またその立場を濫用することで独占禁止法に違反する可能性があることを鑑みての公表です。

この記事では、公取委の見解について内容を紹介するとともに、デジタルプラットフォーム事業者が現在の経済の中でどれほど優位的立場にあるかをまとめています。

また、これをふまえて、今後ECがどのようなデジタルプラットフォーム戦略を展開していくべきかについてもふれています。

デジタルプラットフォームの取引における考え方を発表

公正取引委員会は、2019年12月に「デジタルプラットフォーム事業者」の取引規制について考え方を公表しました。

同事業者は、消費者の個人情報を扱う点で消費者に対して優位的な立場にあります。公正取引委員会は、優越的地位の濫用規制における公取委の考え方を明確化することで、法運用の透明性を確保し、デジタルプラットフォーマーの取引における危険性をあらかじめ認識できるとしています。

デジタルプラットフォーム事業者とは

デジタルプラットフォームは、情報通信のテクノロジーや収集したデータを活用してオンラインの「場」を意味します。この「場」は、さまざまな利用者が同時に存在する多面市場となり、間接的なネットワーク効果がはたらきます。

このようなデジタルプラットフォームを第三者に提供する事業者のことを、デジタルプラットフォーム事業者といいます。

AmazonやApple、マイクロソフト、アルファベット(Google)などは、世界を覆い尽くす巨大なデジタルプラットフォーム事業者です。

デジタルプラットフォーム事業の仕組み

デジタルプラットフォームの事業は、ユーザーにとって便利なサービスを無料で提供し、その利用で得られたデータを、広告主や利用企業に対して提供するというビジネスモデルです。

例えば、Googleの場合は無料で使える検索エンジンをユーザーに提供し、ユーザーが検索した内容から得られるデータを使って、広告主から広告料を得ています。

Amazonや楽天市場は、モール型サイトというプラットフォームを介して消費者と事業者を結びつけて、商品を売買するという両面市場となっています。

FacebookなどのSNSは、登録するユーザーは無料でSNSを利用できます。しかしSNS内にある広告スペースは有料で第三者に提供されており、FacebookはSNSのユーザーが入力する個人データに基づいた的確な広告スペース運用をすることで、収益をあげています。

こうした状況が、デジタルプラットフォーム事業者の独占化、寡占化を招くとした公正取引委員会は、見解を発表しました。

デジタルプラットフォーマーに対する公正取引委員会の考え

公正取引委員会の示した考え方は、正式には「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」といいます。

委員会は、デジタルプラットフォーム事業者の独占化および寡占化が進む特性として、消費者に対するデジタルプラットフォーマーの優越的地位を濫用することが消費者の不利益となり、同時に事業者の競争上の有利にはたらくことを挙げています。

つまり、消費者にとって不利益な事柄が事業者にとって利益になる状況が発生し得るということです。

消費者は、デジタルプラットフォーム事業者の提供する検索サービスやSNSなどを利用します。しかしほとんどのサービスは利用するにあたって多くの個人情報を提供する必要があります。

委員会は以前から、個人情報は金銭と同様に経済的価値を有するものであるという見解を示しています。消費者は個人情報という「対価」を支払ってサービスを利用するという「取引」をしているわけです。

取引をおこなう場合、デジタルプラットフォーム事業者と消費者は対等な関係にあるべきです。しかし、実際は膨大な数の個人情報をデータ収集するデジタルプラットフォーム事業者の方が有利な立場にあります。

委員会は、この状況は企業間の公正な競争を阻害する可能性があり、この点が独占禁止法に抵触すると懸念を示しています。

参考:公正取引委員会による資料 https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/dec/191217_dpfgl_21.pdf

デジタルプラットフォームの優越的地位とは?

公正取引委員会は、デジタルプラットフォーム事業者の優越的地位について、3つの具体的な根拠を挙げています。

1、代替可能なサービスが存在しない

代替可能なサービスという定義は、個々の消費者ごとに判断するのではなく一般的な消費者にとって代替可能かどうかというポイントで判断します。

つまり、日本全国の人がいきなりGoogle検索から類似の、しかしまったく別の検索サービスを利用するかということ。サービスの機能や品質を考慮すると、現時点では代替が難しいということが分かります。

2、事実上サービスをやめることができない

この点も、個々の消費者ではなく一般的な消費者全体で考えます。

現時点でサービスの利用をやめられたとしても、そこに蓄積されたデータを丸ごと別の類似サービスに移すことや、ネットワークの形成をそのまま維持することは事実上できないと、委員会は考えています。

現実として考えると、消費者としての個人が別の検索サービスやSNSを使うことはできても、勤め先では利用せざるを得ないというケースも想定されます。

3、事業者が取引条件を左右できる立場にある

デジタルプラットフォームは、寡占状態になると自由に価格や品質といった取引条件を変更できるようになります。

公正な企業間競争がおこなわれる場合、A社がいきなり理由のない値上げをおこなえば、消費者は類似商品を従来の価格で提供しているB社やC社の商品を購入するようになるでしょう。

しかし、デジタルプラットフォーム事業者が提供するような替えのきかないサービスは、値上げや利用条件の変更を通知されても、そのまま使わざるを得ない状況にあります。

こうしたことから、委員会は消費者が不利な取引条件にも応じざるを得ない=事業者が優越的立場にあるという見解を示しています。

公取委の示す消費者の不利益とは

しかし、現代のECにおいてデジタルプラットフォームは不可欠な存在です。Googleの検索に表示されやすい商品情報登録、SNSを活用したプロモーションや販売など、どれをとってもデジタルプラットフォーム事業者と関わることなく運営していくことはできないでしょう。

そのため、公正取引委員会の考える「デジタルプラットフォーム利用における消費者の不利益」についてもおさえておく必要があります。これを理解していれば、適切なかたちでデジタルプラットフォームを利用することができるでしょう。

消費者にとっての不利益についての考え方には、次の6つの類型があります。

消費者の不利益1. 利用目的を知らせない個人情報の取得

「行為類型(1)ア」として、消費者に利用目的を知らせないまま個人情報を取得する行為が挙げられています。

なおこれには、一般の消費者には分かりにくいような文言で説明したり、わざと理解しにくいような言葉で説明されるケースも含まれています。

消費者の不利益2. 不必要な範囲の個人情報の取得

「行為類型(1)イ」としては、利用目的の達成に必要な範囲を逸脱して、なおかつ消費者の意に反して個人情報を取得することも挙げられます。

なおこれには、同意を得ていないだけでなく、やむを得ず消費者が同意させられるケースも含むとしています。例えば、同意しないとサービスの利用が著しく制限される、同意しないとサービスが使いづらくなるという場合が想定されます。

消費者の不利益3. 安全管理対策を講じない個人データの取得

適切な安全管理を講じないままの個人情報取得は、「行為類型(1)ウ」として記載されている不利益です。

個人データには、住所や電話番号、メールアドレスといった個人を特定する情報から、購買履歴や視聴履歴など、パーソナルな情報も含まれます。

セキュリティ上の理由で漏洩してはならない情報もあれば、趣味嗜好を第三者に開示されたくないという理由で守られなければならないデータもあるでしょう。

こうした個人情報を不十分な水準の安全管理体制のまま取得することは、消費者に不利益を与えるとしています。

消費者の不利益4. 対価以外の個人情報や経済的利益を提供させる

「行為類型(1)エ」には、サービスを利用する対価として消費者が提供している個人情報以外にも、追加の個人データや経済上の利益を提供させる行為が挙げられています。

とはいえ、消費者が完全に任意のもとで提供する場合や、追加サービスの対価として提供する場合には問題となりません。

例えば、サービスにSNSを紐づけることでクーポンを取得できたり、さらに便利にサイトを利用できるような仕組みになっていれば、このような「別途の提供」は消費者の不利益にはあたらないとしています。

消費者の不利益5. 消費者の意に反して利用範囲を超えた個人情報を利用

「行動類型(2)ア」は、利用目的の達成の範囲外で、消費者の意に反するかたちで個人情報を利用することです。

「行為類型(1)ア」では、消費者に知らせないまま利用目的を超えた個人情報を使うことが消費者の不利益になるとしていました。

(1)と(2)の違いは、消費者に利用を知らせているかどうかという点です。

なおこの場合の「意に反して」は同意を得ていない場合だけでなく、やむを得ず同意を強要されている場合も含まれます。

消費者の不利益6. 安全管理対策を講じない個人データの利用

「行為類型(2)イ」は、安全管理をおろそかにしたまま個人データを利用することをさします。

適切な安全管理を講じないまま個人情報を取得することは、消費者に不利益を与える「行為類型(1)ウ」とされていました。

「行為類型(2)イ」では、その取得した情報を安全ではない環境下で利用することについてを指摘しています。

デジタルプラットフォームは消費者への情報開示が不可欠

公取委のこれらの見解をまとめると、デジタルプラットフォーム事業者は、消費者に対して取得する個人情報取り扱いについて明朗な姿勢を打ち出すべきとなります。

  • ・消費者の同意なき個人情報の取得/利用
  • ・安全ではない環境下での個人情報の取得/利用
  • ・本来の範囲を超えた個人情報の取得/利用

これらの事態は、すべて消費者の不利益に該当します。ビジネスにおけるビッグデータの活用可能性などから、事業者とすれば「得られる情報はすべて取得したい」というのが本音でしょう。しかし、デジタルプラットフォームと消費者が取引において対等な立場にあるという前提がある以上、個人情報は適切に取り扱われなければなりません。

デジタルプラットフォームは消費者と事業者をつなぐ

とはいえ、デジタルプラットフォームが「悪」かと問われればもちろんそうではありません。

市場を多面化することに成功したデジタルプラットフォームは、マーケットを世界規模に広げることに貢献し、新規顧客の開拓機会やベンチャー企業の台頭、企業とフリーランスの結びつきなどにも一役かっています。

企業や事業者と、一般消費者はGoogleのような検索サイト、あるいはSNSを通じて距離を近くし、よりスムーズで直感的な購買を促進しています。

日本にもいよいよ圧倒的な通信速度の5Gが登場し、一部地域から順次利用できるようになります。あらゆる機器がネットにつながり、その速度が倍加すれば、デジタルプラットフォームの重要性もますます高まっていくでしょう。

IoTによって、開発やモノづくりといった現場も大きく変貌しつつあります。

さいごに

デジタルプラットフォームは、今や世界中でなくてはならない存在になっています。

しかし、依存し過ぎれば事業者の市場独占を招くことになりかねず、その影響は一般消費者だけでなく、プラットフォームを利用する事業者にも及びます。

消費者の不利益になる可能性もしっかりと頭に入れて、うまくつきあっていきましょう。